クソゲー
『人生はクソゲーだ、なんてよく言うじゃない?』
土曜日の午後、いきなり自宅に遊びに来た『先輩』がいきなり切り出してきた。
『いや、言いませんね』
『先輩』のこうした脈絡のないフリはよくあることなので面倒くさい話になる前に、ゲーム機を操作しながら会話を切り上げようと試みる。
『後輩君、よくつまらないって言われない?』
『これでも友達付き合いには苦労してませんが』
なおも続けようとするので、適当にあしらう選択をする。
『それじゃあ言うとして……』
抵抗は無意味だったようだ。どうやら会話を切り上げるという選択は俺には取れないらしい。
『でもさ、それってどんな種類のゲームかにもよると思うんだよ』
『どういうことですか?』
少しだけ興味を引かれた。「人生はクソゲーだ」という文句はよく聞くが、ゲームの種類など気にしたこともなかった。
『例えばだけど、買い切り方のコンシューマーゲームか、ダウンロードした後も課金し続けられるソーシャルゲームかでその人の人生って違ってくると思わない?』
意味が分からない。いったい何が言いたいのだろう。
『別に今なら買い切りの方でもDLCとかあると思いますが……』
『いやまぁそうなんだけど……そうじゃなくて! 課金できるかできないかでその人の人生って左右されると思わない?』
話が見えてこない。手元のゲーム機には相変わらず自動でゲームテキストが流れていく。
『まぁ、お金はあったほうがいいでしょうけど』
『うん、だから今後も私が色々するためにもお金が必要だなって。私が必要なものを買い与えてくれるでもいいんだけどさ』
本当に意味が分からない。何を言っているんだこいつは。──ふと、『先輩』がこちらを向いた気がした。
『意味が分からない、って感じだね。違う違う、後輩君、君じゃないよ。画面の前の君、見てるんでしょ? というわけでDLCもよろしくね!』
いきなり現実に浸食されたことへの困惑と、プレイヤーである自分を指名されたことによる恐怖、そしてここまで伸ばしておいて課金を催促されたことへの怒りでゲーム機をベッドに投げてしまった。
「ふっざけんな! エンディングまでは良かったのに何だこのクソゲー!」
ゲームのキャラクターの中でも、お気に入りの「先輩」とのストーリーが続くと思っていただけに、そのギャップに落胆した。
お気に入りのキャラにDLCを購入することを要求されたが、買うことはないだろう。やはり安いからといって買うべきではなかった。評判が良くても、安い物には安い物なりの理由がある。次、ゲームを買うときはしっかりレビューも見ておこう。
俺はそう心に誓った。
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