マリー・アントワネット

マリー・アントワネット。

それは、フランス革命に巻き込まれたことにより、処刑されてしまった悲劇の王妃。

『パンがなきゃケーキを食べればいい』というデマによって、悪女だの何だの言われているけど......雰囲気的には、優しそうな人だな。


「......どうかしました?」


キョトンとした顔で、そう尋ねるマリーさん。

....可愛い。


「あ、いや....その、マリーさんはどうしてここに?」


俺がそう尋ねると.....マリーさんは、不思議そうな顔をしながら、こう言った。


「......信じてもらえないと思うのですが、私は、ついさっき処刑されて死んだはずなのです。なのに」

「なのに、自分は生きている.....ということですか?」


俺の言葉を聞き、コクリと頷くマリーさん。


「そして、気がついたらここにいたのです」

「なるほど.....」


つまり......マリーさんは、処刑されて死んだかと思ったら、この時代に転移していた.......ということか。


「でも....馬も繋いでいないのに走る箱や、平べったいパンに喋りかけるなんて.......東洋は変わった国なのですね」

「えっと......その、確かにここは東洋なんですけど.........正確に言えば、ここは未来の世界なんです」


俺は、マリーさんにそう伝えると


「えぇぇぇぇぇぇ!?そうなのですか!?」


案の定、めちゃくちゃ驚いていた。


「は、はい。そうなんです」


マリーさんの圧に押され、そう言う俺。

それを聞いたマリーさんは、しばらく考えた後


「フランスは!?この時代にフランスは残ってのでしょうか!?」


と、叫びながら尋ねてきた。

フランス革命で生涯を終えたのに、フランスのことを気にするなんて......この人、やっぱ良い人だな。


「ふ、フランスは今も残っています。もちろん、マリーさんの故郷であるオーストリアも残っていますよ」


俺がそう言うと、マリーさんの顔は輝き......俺に向けて、涙ぐみながらこう言った。


「よかった.....」


.......どうして、こんなにも優しい人が処刑されたんだ?

時代の流れって、本当に残酷だな。

そう思っていたら、どこからかお腹が鳴る音が聞こえるのだった。


「..........」


顔を真っ赤にしながら、俯くマリーさん。


「......この近くに俺の家があるんですけど、来ます?」

「.......はい」


そう言った後、近くにある俺の家へと向かう、俺とマリーさんなのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る