第13話 犬猿の仲
「ところでゴリラ・モンド警部。そちらの二人を紹介してくださらない?」
「だから誰がゴリラよ! こいつは彼氏のライアン・スローン。で、この子が娘のアイちゃん」
「はじめまして! アイ・スローンです!」
アイは元気よくロゼミに挨拶をする。
その天真爛漫な姿に、ロゼミも柔らかい笑みを浮かべた。
「はじめまして、わたくしは世界を股に掛ける巨大財閥クロサイト財閥令嬢のロゼミ・クロサイトですわ」
「新聞で見たことあります! 怪盗ベオウルフといつも対決してる人ですよね!」
「あら、よくご存じですわね」
アイの言葉にロゼミは嬉しそうに笑う。
「もっと知ってますよ! 貧しい人への支援を行ったり、孤児院もいくつか運営しているって有名ですし、怪盗ベオウルフとの対決では毎回入手困難な宝石や美術品を手に入れて正々堂々勝負に臨み、盗まれても勝者の権利って気にしないクールな方って有名ですから!」
有名人と会えて嬉しいのか、アイは興奮気味に捲し立てる。
「まあ、それほどでもありますわ!」
そんなアイの様子にロゼミは上機嫌になっていた。
「ま、ベオウルフに挑戦する理由はクソだけどね」
「あら、お仕事で捕まえられないあなたよりはマシですわ」
どうもベオウルフに関することで二人は相容れないようだ。
これは早めに話を切り替えなければ。
俺はアイの背中を軽く押す。
アイは俺の意図を理解してくれたようで、ディアナの耳元に口を近づけると小さな声で囁く。
「ねぇねぇ、ママ。ママも現場を見てきた方がいいんじゃない?」
「それもそうね。これでもベオウルフの事件の捜査はあたしの管轄内だし」
ディアナは刑事らしく表情を引き締めると、近くにいた若い刑事に話しかける。
「ねえ、ジル。手袋持ってない? あたしも現場を見たいんだけど」
どうやら若い刑事はジルという名前のようだ。フルネームはわからないが。
「す、すみません。予備を切らしていて」
「だったら俺のを使えよ」
「助かるわ」
俺が常備している手袋を渡すと、ディアナはジル刑事に連れられて犯行現場へと向かっていった。
ディアナが現場に向かったのを確認して、俺はロゼミに尋ねる。
「なあ、あんた。さっきディアナが言っていたベオウルフに挑戦する理由って何なんだ?」
新聞などで見る限り、ロゼミは金持ちの道楽でベオウルフへ挑んでいるように見える。
そんな彼女がベオウルフに挑戦する真の理由。それが気になっていたのだ。
俺の質問を聞いたロゼミは得意げな表情で答える。
「彼を捕らえてわたくしのものにするためですわ」
「へ?」
予想外の返答につい間抜けな声が零れてしまった。
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