3:夕日に照らされた友情と憧れ
学園の授業が終わり、1日の中で最も重要な時間、放課後がやってきた。
この自由な時間の使い方が、生徒の将来を左右すると言っても過言ではない。
そんな貴重な時間を、マオとレイレイは学園内の庭で過ごしていた。
ベンチに並んで座り、他愛もない会話に花を咲かせる二人。
しかしこの何気ない時間は、彼女たちにとって何よりも尊く、大切なものだった。
「ねぇレイレイ、明日の予定は決めてる?」
マオが好奇心たっぷりに尋ねる。
レイレイは少し考えてから、柔らかな笑みを浮かべた。
「明日は魔法の特訓をしようと思ってるの。さっき勉強してた魔法をマスターしたくて」
「いいね! 私も協力したいな。いいかな?」
「もちろん! 一緒だと楽しいし、何より心強いよ」
優しい笑顔でマオに応えるレイレイ。
魔法の特訓は二人の日常であり、お互いを高め合う大切な時間だった。
「そうだ、マオちゃん。今日話した夢のことなんだけど……」
レイレイが切り出す。
「勇者と魔王の戦いの夢?」
とマオが確認する。
レイレイは頷き、瞬きを繰り返しながら、少し戸惑いつつ続ける。
「もしかしたらその夢は、過去の誰かの記憶なのかもしれない」
「えっ、そんなことあるの?」
不思議そうに目を見開くマオ。彼女にはまだピンと来ていない。
「魔法ってただの技術じゃないと思うの。古代からの力が宿ってるんだと思う。だから私たちが夢で古代の出来事を見ることもあるかもしれないし、魔法の力が何かを伝えようとしているのかもしれない」
とレイレイは真剣に語る。
「うーん……そうなのかな」
とマオは曖昧な返事をする。
朝に比べて、夢の記憶はおぼろげになりつつあった。
戦いの再現も、今となっては曖昧なものだ。
「最初は夢か空想だと思ったけど、よく考えたらマオちゃんの言葉には真剣さがあったから」
とレイレイが続ける。
「レイレイ……」
とマオは少し感動している。
「きっと、もっと勉強しなきゃダメだよってメッセージなんだよ」
「あ、そっちの方向に持っていくんだ」
とマオは苦笑する。
「そう! もっと勉強すれば、夢に出てきた勇者や魔王みたいにカッコよくなれるんだって。だから一緒に頑張ろう!」
とレイレイは熱っぽく語り、マオの手をぎゅっと握る。
その瞳には炎のようなものが揺らめいているように見えた。
「はぁ……そうだよね。もっと魔法と向き合わないとなぁ」
とマオは深いため息をつく。
「そうだな。研鑽を怠らなければ、きっと道は開かれるさ」
と二人の背後から、声が聞こえる。
心当たりのある声に、マオとレイレイは振り返る。
「あっ! やっぱりヴァリア先輩だ!」
声を上げたのはマオだ。
ヴァリアと呼ばれた少女は、気品溢れる優雅な笑顔を絶やさない。
「やあ、マオにスレイン。今日は心の栄養補給中かな?」
少し照れくさそうに、レイレイはヴァリアに会釈する。
そして心の中で、ヴァリアの言葉に感謝していた。
(ヴァリア先輩くらいだよ、私をスレインと呼んでくれるのは……。)
「ご無沙汰してます、ヴァリア先輩。今日はどんなご予定を?」
とレイレイが尋ねる。
「ああ、これから訓練に行くところだ。最近、森の奥が騒がしいからね」
「上級クラスは大変なんですね……」
「マオ、人の役に立てるなら、大変でも嬉しいことだと思うよ」
とヴァリアは真摯に語る。
「はぇ~……ヴァリア先輩は本当に素晴らしい人だなぁ!私の目標だよ」
とマオは尊敬の眼差しを向ける。
「マオにそう言ってもらえて光栄だな」
ヴァリアはマオの頭を優しく撫でる。
小動物のようにうっとりとするマオ。憧れの先輩と触れ合えることが嬉しい。
「えへへーっ」
と幸せそうな笑顔を浮かべるマオ。
「さて、そろそろ行かないとな」
とヴァリアは言う。
至福の時間に浸るマオに代わり、レイレイが会話を続ける。
「お忙しい中、私たちと話してくださってありがとうございます」
「いや、気にしないでくれ。私から声をかけたのだからね」
ヴァリアは優しく微笑む。
二人に手を振り、ヴァリアは立ち去っていった。
マオとレイレイは、彼女の背中を見送る。
「やっぱりヴァリア先輩はかっこいいよなぁ……」
とマオが憧れの眼差しを向ける。
「そうだね。私もマオちゃんほどじゃないけど、憧れちゃうよ」
とレイレイも同意する。
ヴァリアの優しさと姿勢に、二人は心の中で敬意を新たにしていた。
彼女の存在が、魔法の特訓への励みになる。
「頑張ろう、レイレイ!いつかヴァリア先輩みたいになれるようにさ!」
とマオが力強く宣言する。
「うん!」
レイレイも力強く頷く。
二人は力強く一歩を踏み出す。明日への希望に胸を膨らませながら。
「じゃあマオちゃん、早速この魔術書のここを読んでおいてね!」
とレイレイが魔術書を開く。
「………………はーい」
とマオは少し気乗りしない様子で返事をする。
夕日に照らされた庭で、二人の友情が静かに、しかし力強く育まれていく。
それは彼女たちの未来への第一歩となるのだった。
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