引きニート(27)の俺は元同級生でオギャりたい。 ~学園アイドルとギャルと文学少女を手込めにしました~
夕日ゆうや
27歳の赤ちゃん
「赤ちゃんなの?」
母ちゃんはあきれ返ったような声を荒げる。
「もう嫌だ。死にたい」
でも俺はもうやる気が起きない。すべてがネガティブに感じる。
「ベビーシッターを頼んだから、大人しくしなさいね」
「赤ちゃんじゃねーって!」
出て行く母ちゃん。
「失礼しまーす」
ベビーシッターを請け負う女の子が一人、やってきた。
まあ、俺が追い返せばいいか。
「赤ちゃんなの!?」
同級生のヒロインが現れる。初恋のあの子だ。
「なん、だと……」
「あら、
「バブみを感じる」
「ふふ。さあ、お母さんだと思って甘えなさい」
「ばぶー!」
「ああん! とってもいい感じ~♪」
「さ。まずはミルクよ」
え! もしかして初野のおっ〇い!
哺乳瓶を取り出す初野。
「ですよね~。知っていたし」
「あら。赤子くんはまだ赤ちゃん、しゃべっちゃダメだよ~」
「ば、ばぶ……」
ミルクを人肌に温める初野。
「さ。飲みましょうね~」
「ば、ばぶ~」
でもこれって初野の手作り料理じゃないか?
ふふん。これは最高だな。
哺乳瓶に口をつける。
「ば?」
俺はそのミルクを飲もうとするが、うまく吸えない。
どうやったらミルクが出てくるんだ?
これはなかなか難しい。
おっ。やっと飲めた。
うん。甘い。
でも人肌ってぬるいな。
もっと熱くても大丈夫なのに。
でもそれを伝えるすべがない。
だって今、俺赤ちゃんなんだぜ?
「さー。げっぷしましょうね」
赤ちゃんって自分ではげっぷできないだっけ?
あれ。俺、子育てしたことないから分からないや。
「ばぶー」
俺の背中をとんとんと優しく叩いてくれる初野。
なんだろう。とても暖かく感じる。
「さ。次はおむつの交換ね」
「ば、ばぶっ!?」
「赤ちゃんは大人しくしていてねー」
俺のズボンを脱がせにかかる初野。
だが、これも赤ちゃんならしかたのないこと。
抵抗はできない。
あれよあれよという間にズボンが脱がされパンツだけになる。
俺のお気に入りのボクサーパンツが姿を現すと、さすがの初野も顔を赤らめている。
「さ。おむつをはきましょうね」
大人用のおむつを
すると、じとっとした手で俺のパンツを脱がせにかかる初野。
ごくりと生唾を飲み下す。
ニマニマし始める初野。
それはどんな気持ちで脱がせているんだ?
疑問に思うが俺は赤ちゃん。言葉に出来ない。
脱がせ終わると初野が恥じらいながら顔を覆う。
「たくましい……」
かすれるような声で何かを呟く。
そしていよいよおむつをはかせにかかる彼女。
なんだかすごく嬉しそうな顔ではかせてくるんだけど!?
何がそんなに嬉しいんだよ!
俺は恥ずかしいんだよ!
「嫌がり恥ずかしがる赤ちゃん、富士山級ね!」
訳のわからないことを言っているが、今の俺は赤ちゃん。口答えできない。
「ばぶー」
せめてもの抗議を行うが……
「はい。おしめ変えたからねー」
ウオオオオ。
屈辱的!
好きな女の子におしめを変えられるなんて!
「ば、ばぶー……」
「どうしたの? 元気ないね」
おまえのせいじゃー!
「ばぶぅ!」
「はいはい。これね」
シャラシャラと音の鳴るオモチャを持ち出す初野。
俺の手に握らせると子守唄を歌い始める。
聞いたことのある、落ち着く歌声。
まるで睡眠導入剤のような美声に深い眠りにつくのだった。
夢から覚めると目の前には母がいた。
「どう? ベビーシッターは?」
「……まあ。悪くない」
「良かった。今後も頼むわね」
この母にしてこの子あり、といったところか。
俺の鋼メンタルは遺伝かもしれない。
それにしても初野は相変わらず可愛くて、素敵な女の子だったな。
昔からそうだった。
あの高校の夏だって彼女は輝いていた。
ああ。俺がダルマと罵られ、いじめられていた時も救ってくれた。
初野は初めてちゃんと話してくれた女の子だった。
「また、会いたいな……」
「ちわ~っす、ベビーシッターの
まさかの担当者変更!?
それもギャルの曽根じゃないか!
高校の時一緒だった。あまり絡みはなかったけど。
「噂どおり、おとなしい赤ちゃんっすね」
ニタニタと我慢ならないような笑みを浮かべる曽根。
「ば、ばぶぅ……」
なんだよ、その言い方。
まるで俺が赤ちゃんみたいじゃないか。
「ほんで、何して欲しいっすか?」
「ばぶー!」
まずは飯だ!
「ほへー。ミルクの時間っすね」
資料を読みながら曽根は粉ミルクを準備し始める。
「ばぶ?」
あれ? 初野の時は持参していたけど?
「あ、市販のですいやせん。うち母乳出ないんで」
んんんん?
その情報だとまるで初野は出るみたいな……。
おおん! 初恋の子が子持ち!?
ショックがでかすぎる。
「まあ初野ちゃんも同じの使っていたっすけど」
からからと笑う曽根。
「ばぶ……!」
なんだよ! びっくりさせるな!
俺は腹の中でうめく。
「やっぱり面白いっすね、赤子クン」
「ばぶっ!」
俺を知っていた?
陰キャで根倉な俺を?
「いつも成績優秀で、格好いいっす」
「ば、ばぶぅ……」
じわりと瞼の裏が熱くなる。
「泣くのも赤ちゃんの特権っす」
オギャア――――!
俺は年甲斐もなく赤ちゃんのようになき続ける。
泣き止むまで、曽根は涙を拭ってくれた。
「えらいえらい」
曽根の暖かさはまさに母のぬくもりのようだった。
「さ、ミルクにするっす」
曽根の腕に抱かれ哺乳瓶に吸い付く俺。
なんだかみっともない姿を見せてしまった。
「そろそろ終わりの時間っすね……」
名残惜しそうに呟く曽根。
「ばぶ」
ベビーシッターをやっていれば、また会えるさ。
そう返事すると、曽根は満足そうに微笑む。
「またっす!」
はつらつとした顔で玄関を開ける。
また曽根とも会いたいな。
ピンポーン。
翌朝、インターホンの音がなる。
「失礼します。ベビーシッターです」
玄関を開けて入ってきたのは
俺のもと同級生だ。
俺と同じくいつも教室の端で本を読んでいた地味な子だ。
「ばぶ……」
あまり話すところを見たことないが。
「……」
ペコリとお辞儀をする読川さん。
黙々と作業を開始する。
「ばぶ?」
「まずはミルクですね」
そう静かに言って胸に穴の開いた上着を見せる。
穴のところに哺乳瓶を突き出し、俺に近づけてくる。
「……母乳です」
俺の知っている母乳とは違うのだが。
「……」
無言で哺乳瓶を近づける読川さん。
俺はそれに応じてミルクをチューチューと吸い出す。
読川さんは嬉しそうに頬を緩める。
「……」
しかし、哺乳瓶だと飲みづらいな。
少量ずつしか入ってこない。
飲み終えると、読川さんは俺の背中をポンポンと叩く。
「……あ。ゲップしましょうね」
言葉使いは丁寧だが、言葉が足りないことが多い。
この子ほんとうに大丈夫か?
「……」
無言で俺のズボンを脱がせにかかる読川さん。
「ば、ばぶっ!」
必至に抗議する。
「あ。すみません。おむつの交換です」
「ばぶぅ……」
それなら仕方ない。
俺は言われるがまま、なされるがまま、ズボンを脱がされる。
「……おっきい」
何を見てそう呟いたかは流すとして。
「はい。おむつです」
おむつを履くと、ズボンを戻す。
俺ってやっぱり赤ちゃんなのかもしれない。
静かな印象の読川さんはあらかたベビーシッターの仕事を終えて帰路につく。
だが、ちょっと寂しく感じるのは俺が赤ちゃんだからなのだろう。
これでは母ちゃんに反論できないな……。
「ただいま」
母ちゃんが仕事から帰ってくる。
「どう? ベビーシッターさんは?」
「控えめにいって鬼うれぴいね!!」
どこかのネットスラングで返す。
俺の赤ちゃん人生はまだ始まったばかり。
~完~
引きニート(27)の俺は元同級生でオギャりたい。 ~学園アイドルとギャルと文学少女を手込めにしました~ 夕日ゆうや @PT03wing
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