中学校

小学校と同様に、合唱部に入った私。


幸いというかなんというか、隣の小学校にはピアノを弾ける子も多かったし、私と同じ小学校の同級生は、部活にはいなかった。


小学校の卒業式で、「もう伴奏は弾かない」と誓っていた私は、最初の頃は穏やかに過ぎていった。


「すみれ、今度の音楽祭の伴奏を弾きなさい」


「嫌です」


不穏な雰囲気は突然やってきた。そのように、合唱部の先生に宣告された。


「嫌です。私が合唱部に入ったのは歌うためであって、伴奏を弾くためではありません。それに、そこまで弾けません」


「そんなこと言ったって、今度のプログラムの伴奏者にあなたの名前を書いてもう出しちゃったんだから」


「はあああ〜〜〜〜〜?!」


私の平穏は過ぎ去った。挙句の果てには、当の合唱部の先生に「あなた、手が小さいわねえ。私も小さいけど、それより小さい!」と言われる始末。


じゃあ頼まないでください。


約一年後。


「課題曲の伴奏を弾きなさい」


またもや命じられたが、ここは断固として拒否した。


「技術的に無理です。弾けません」


小学三年生からちゃんとピアノは習っていないし練習していない私は、他の人より経験は積んでいるが、技量が圧倒的に不足していた。


楽譜を見たら流石に、練習すれば弾けるのか、練習しても弾けないかくらいはわかる。


そしたら、その断り方が合唱部の顧問の先生の何かに触れたのか、割と怒られた。


「挑戦する前から弾けないとか言わないの!」


云々。


とはいえ私もそこは譲らず、なんとか回避したのであった。


その前後もちょっとした伴奏などは頼まれていて、小学校での誓いは全く果たせていなかった。


反抗期真っ最中だった私は、ある日母親に対してキレた。


「私にピアノをやらせたから、こんな厄介事に巻き込まれているんだ! なんでやらせたんだよ! もう、この伴奏が終わったらピアノなんて二度と弾かないから!!」


言葉の通り、家に電子ピアノが鎮座していても、今までのように遊びで弾いたりすることも一切なくなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る