第10話 朝はちゃんと作るから。

 帰ると言ったちーちゃんを、無理矢理引き止めた。やや広めだとは思うけど、我が家は1Kなの。二人でカーペットの上に座っているけれど、すぐそこにベッドがある。邪な妄想をしていたせいか、意識してしまうのを感じ取られたくない。


「あのぉ〜?夜遅いし、迷惑かけたくないんですが…。」

「私が寄っていってって言ったんだから、迷惑じゃないってことでしょ。」

「で、なぜに…お味噌汁を??お茶飲んでけって言ってませんでした?」

「和食が恋しいかと思ったの!飲まないなら置いといて!」

「え、飲みます!そんな優しさでお味噌汁を!!嬉しいです!!」


 ダメだ…、正常な判断ができていない。。お茶にしようか、コーヒーにしようかと、お湯を沸かしながら悩んでいたら、お湯を注ぐだけのレトルト味噌汁を作ってしまった。だったら一層のこと、手作りすれば良かった!ごめんね!でもそれ美味しいから!なめこっ!


「で。楽しかったの?旅行。」

「はい。無計画だったので紆余曲折はありましたが。あ、写真見ます?」

「写真は…あ、あとで良い。。次会うときで。。」

「そうですね、遅い時間だし。あの、千夏さん?連絡しなかったから怒ってるんですか?」


 来たっー!きっかけ!!話の流れを作らなきゃ!付き合う流れにっ!!お願い…私、口説けないから!もう、さっさと口説いて!


「怒ってない…。心配してただけ。無事かわかんないでしょ?」

「ごめんなさい…。」


 すごいかわいい…怒られて泣く寸前の子どもみたい。。あ〜、もうっ!年下っ!なんなのっ!!?


「怒ってないってば。ただ、毎日連絡してたのに…そんなもんかって思って。」

「そんなもんって?」

「え、……連絡取らなくても平気なんだなって。好きって言ってる割に?へぇ?みたいな。。」

「えっ!?」


 ま、まずい…。目を丸くしている…。なんとか有耶無耶に…、、否っ!このまま行け!絞り出せ、フェロモン!!絞ればまだ出るでしょ!ふぐぐっ!!


 と、千夏が自問自答して搾フェロしている間に…、年下の千夏は心のなかで万歳三唱をしていた。


 うわ…。これは…期待していたよりキテる?怒ってる、怒ってるっ!(笑)


 これは…そろそろ行くか?イヤでも待て。どうせなら、言わせたい。。だけどこれ以上怒らせて…んー難しい。でもな…、付き合ってもらうじゃ嫌だ。ちゃんと相思相愛なのはハッキリさせたい!よしっ、


「あの、それって都合よく考えて良いんですか?」

「えっ!え?どういう意味?」

「や、なんでもないです。はぁ…。」

「まっ、なに?」

「いえ、ハァ…。やっぱり私は可愛くないし…」

「え、かわいいよ!?」

「や、そういうの良いデス…。ありがとうございます。ありがとうございました…」

「ちょっ、かわいいって言ってるでしょ!?」

「お味噌汁、美味しかったです。そろそろ迷惑になるといけないので…失礼しますね。」

「ちょっと、まっ、えっと…」

「あ、話があるんでしたっけ。何でしたか?」

「はっ!?ちが、え?話??」


 どちらも引かないのか…。また次回に持ち越すのか…?心のなかで、フラストレーションは絶頂に達しようとしていた…。


(え、私が言うの?)

(早く!言って!)

(好きだって?言うの??)

(ほら、帰っちゃうよ?いいの?)

(う〜!うがぁぁ!!)

(早く、早く、)

(まじか!無理無理無理!!)

(ちーなーつ!ちーなーつ!それ!)

(え〜〜〜〜〜〜〜〜????)


「じゃ、そろそろ…」

「待って!」

「なんですか?千夏さん。」

「あ、あんた…わかるでしょ普通。。」

「なにが?」

「なにって…毎日連絡してて…」

「それはありがとうございます?」

「あんた!?わかってない!?」

「え?なにがですか?」

「わかってるんじゃん!!」

「だから、言葉にしてもらわないと…わからないですって!♡」

「うがぁぁぁぁ!!」

「ひどいです。そんなに嫌なら大丈夫ですので…。」

「なにこれ!?」

「顔、真っ赤です♡」

「見ないで。」

「見ます♡」

「もういいでしょ!」

「え、」

「決定ね!」

「うわ。本気ですか?そんな、大人として…」

「わかったよ!!」


 あーあーあー。

 かわいそうだし、そろそろ許してあげますね。なんか涙目だし(笑)


「泊まっていーですか?」

「………好き。」

「言えたの!♡」

「ムカつく!」


 早くデレてくださいね。


 続く。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る