第9話 うがぁぁー!!
待っていた電話が鳴ったのは、仕事が終わって、自宅でご飯を食べていた時。
『あ、千夏さん?今、帰ってきました!』
『どちら様ですか…?』
『えー!?ひ、ひどい!やっと話せたのに〜!』
それはこっちのセリフよ。2週間、1度も連絡してこなかったくせに。
『元気そうね。さすがに…連絡ないから心配したよ。』
『ごめんなさい!行きで寝坊して、WiFiルーターをレンタルしそこねまして。。メールアドレス聞いてなかったし…。』
そうなんだ。じゃあ、あえて連絡しなかったわけじゃないんだ?それならいい…いや、良くないけど。
『ふんっ、寂しくなかったみたいね。そうよね。あっちで楽しくやってたんだろうし?』
『いやいやっ!寂しくなかったわけないでしょう?だから、着いてすぐに連絡を…。それより、今日何時頃寝ますか?』
『寝る時間なんて決めてないわ。』
『お土産。お土産だけ渡しに行くので、待ってて下さい。2時間はかかりますけど。』
え、来るの?今日、連絡もなくて。会えないと思っていた。会えるのは嬉しい。だけど、2時間後って…。
『………来るのは良いけど、遅いし。そっちだって、疲れてるんじゃ。。』
『渡したらすぐ帰るので!断らないで!お願い!じゃっ!』
『え!?ちょっ、……切れた。。』
時計を見ると21時近かった。2時間後なら、23時前か。ど、どうしよう??
会えなくて、話せなくて、、我慢しすぎて妄想が膨らんだ。そんなに遅く来るなら、泊まっていけば良い。明日、仕事だから朝から一緒に家を出ることにはなるけど…。
「ゆ、有給………使ったら………うぅっ、多分ダメだ。」
とりあえず、部屋を片付けよう。それから、和食!そうだ、和食だ!味噌汁を…
「や、食べないか。こんな時間に。」
今夜、どうなる?そればかりを考えた。泊まっていくのか、帰ってしまうのか。泊まるなら、どこまでいくのか…。どうやって、今日こそ付き合うのか。期待が膨らみすぎて、逆に不安になる。
「あの子は私が好きなんだし。付き合えないことはないんだから…。落ち着こう。。」
心臓が高鳴るのを抑えて、部屋だけは片付けて彼女の到着を待った。そして、やっとスマホにメッセージが来たかと思うと、『着きました。』の文字とともに、小さく玄関のドアが叩かれた。
私はつい、また不機嫌そうな顔をして、玄関を開けた。なぜこう、演技をしてしまうのか…。
「おかえり。遅かったね。」
「千夏さん。ただいまです。」
「上がって。」
「あ、これお土産。日持ちしないお菓子なので持ってきたんです。」
「ありがとう、お茶でいい?」
「あ、遅いし帰りますよ!渡せたし、顔を見れたので!」
「はい??」
帰る?帰るって言った??私がどれだけ会いたかったかも知らずに…。頭きた。
「じゃ。また連絡しますね、」
「おい、待て。良いから入りなさい。」
「え?え、こわい。なんで怒ってるの!?」
お前が、鈍いんだからだよ!!
もう、絶対今日のうちに付き合ってやる。
続く。
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