第7話 ゆっくりこじあけるつもり

「そういえば言ってませんでしたけど、来週からしばらく旅行に行ってきます。」

「え、そうなの?どのくらい?」

「海外に。二週間ほど。」

「・・・は?」


 無理矢理、勢いをつけて自宅に誘ってみた。ちーちゃんが休みで、私の仕事終わりに待ち合わせた。

 あまり張り切りました感を出したくなくて、部屋の掃除もそこそこに。つまみはデパートのお惣菜を買ってきた。

 そして、人から貰った体裁の、なにやら特別そうな日本酒を飲み始めると、彼女は旅に出るという。


「仕事始めたら長旅も出来なくなりますし、遠い国へ行っておこうかなと。」

「は?どこへ?」

「イギリスから気ままに流れで…。」

「え?危ないよ。1人ででしょ?」

「大丈夫です。慣れてるから危険な場所へは行きません。」


 安全を危惧したような話し方で、軽く反対してみたは良いけれど、心のなかでは別のことを嫌がっていた私。


(私は?寝る前の電話は?しないの?)


 しかし、そんなことは聞けない。私のほうが大人だし。付き合ってもないのに。


「まぁ…………それなら。。今のうちしか行けないもんね。」


(行くなら一緒に…)


 あ、ダメだ。寂しくて無理。この子って、結構一人でいられるタイプなのね。恋愛しだしても一人であちこち動けちゃうのね。私は結構、ずっと二人でいたいタイプ……って、だから!付き合ってもないのに勝手なことを!


「ま、二週間ですからね。あっという間かもしれませんけど。写真たくさん撮ってきますね!」

「写真…。うん。」


 年上の千夏は、テンションがど下がりしたのを悟られまいと、日本酒を飲みながらテレビをつけた。年下の千夏は、デパ地下の惣菜をつっつきながらチャンネルの変わりまくるテレビを見ながら思っていた。


(うっわ…。すっごい嫌そう!これは…まずい。かわいいが過ぎるっ!あ〜、かわいい…嫌なんだ?私がいない間、連絡できないと思ってるんだ??)


 ここ最近の千夏の態度に、自分に好意を持ち始めたのはわかっていた。だけどそれでは物足りない。もっと、明らかに好きだとわかる態度を千夏に取らせたかったのだ。じゃなければ、こっちだって満足させないよ?と、口説く態度に緩急をつけていた。


(やっぱり、この人はかわいいっ。)


「千夏さん?なんか機嫌悪い?」

「え、別に?」

「なら良かったです。」

「千夏さんって、スカ◯プとかやってます?」

「ううん?」

「ビデオ通話とか、しないんですね。」

「あっ、するよ!仕事でするし!!」

「そうなんですね。そっか〜。」

「なに?なんで??」

「いえ。なんでもないです。」

「……………。トイレ。」


 ふふっ、まじ楽しい。年上っぽくないんだよな、この人。笑


 続く。

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