第4話 どうでしょう。どうかな。

 どうやら私は、昨日知り合ったばかりの女性から、好意を持たれているようだ。


(おっと、、これはこれから口説かれるのか??うまくかわさなければ。)


 そう思った千夏は、冗談めいて会話を逸らす。しかし、お互いに少々気まずい。一言話す。そして手持ち無沙汰に酒を飲む。また一言、そしてまた一口・・・。アルコールの回りが早いのは仕方のないことだった。


 2時間後。

「じゃ、何かね??君は、私のことを前から知っていたと?」

「そうです。1、2回はここで見て知ってました。彼女さんと来ていて、、あ、この二人はカップルなんだってわかる会話が聞こえてきて。」

「ほう、、それで?」

「それで、いいなぁ、カップルなんだぁって気になるじゃないですか。それで当然、タイプの方の顔を覚えるじゃないですか。」

「それが、、私?」

「そうです。でも、見た目だけじゃないですよ?話し方とかそういう内側だってちゃんと好きで、」

「ん〜?昨日話しただけで?」

「だけって・・・。でも、時間とか関係なくないですか?」

「あるよ。だって、私のことほとんど知らなくない?思ってた感じじゃなかったら?」


 少し、意地悪な言い方なのはわかってる。だけど、はっきり断っておいたほうが良い。だって、もう懲りなきゃ馬鹿だ。好きで付き合った人が、あんな風に私を責めるようになった。ストレスのはけ口にしたんだ。良く知りもせずに好きだと言い出すのはきっと、短絡的でその場の勢い。どう変わるかなんてわからない。私はもう、懲りなきゃいけない。


 平気なフリしているけど、本当はこの傷が治るように思えていない。あんな馬鹿な女と付き合ってしまったと悪づいていないと。


「千夏さんは、夕焼けとか、虹とかって目にしたらずっと見ていたいと思います?」

「え?まぁ、綺麗だからね。」

「だけど、毎日夕焼けを見ようとはしませんよね??」

「そりゃあね。生活しているとそうは・・・。」

「私は貴女を見ることを取りこぼしたくないんです。そういう気持ちになること自体が私には貴重なんです。常識で抑えたくないです。」

「・・・・へぇ。」

「へぇって。。とにかく、今振らないでください。確かに、千夏さんは大人っぽくて綺麗な人とお付き合いをしていたけど、私みたいなのだって良くなるかも。」

「まぁね、、日本酒やいかの塩辛も教えてくれたし?」

「恋人にされたいことを教えてくださいよ。出来ると思います。」

「うーん。じゃあ、とりあえず。今度休みがあうときに、店員さんのおすすめの日本酒でも飲みに行くか。友達として。」

「え、はいっ!!千夏さんの空いてる日に合わせます!!」

「私、あんまり尽くすタイプは好きではないよ。なにしろ、こないだまで尽くした側なんだからさ。笑」

「でもそれって、失敗を・・・」

「帰る。」

「あっ!ごめんなさい!!帰らないで!!!その前にせめてっ、連絡先を!!!」

「まぁ、いいけど・・期待はしないでよね。」

「わかりました!千夏さんは私に期待していてくださいっ!!」


 まぁ、私はその気にさせるようなことはいってないし。友達付き合意するくらいは良いか。っていうか、こんなに上からもの申しているのに嫌じゃないのかな。。


「あ、千夏さん、飲み物ないですね。もう1杯くらいのみます?」

「あ、うん。ありがと。」


 彼女はメニューを手に取り、日本酒のページを開いてくれた。そして、私の目の前に差し出した。そして、食べ終わったいかの塩辛をもう少し食べたいと思った数秒後に、彼女は勝手に追加で注文してくれたんだ。


 うっかり、ドキッとした。




 続く。

 

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