会わせたい人

 会わせたい人がいるからと約束し、私たちは今、いまちゃんのうちに向かっている。




 許せないだろうか。

 カヤの外、に悲しむだろうか。

 裏切られた、と思うだろうか。



 

 全部かもしれない。

 でも、いまちゃんなら。


 わかってくれるのではないか、とも思う。

 圭太さんの覚悟と決断を。

 

 

 さっきから不安と願いと期待が、行ったり来たりしてる。

 

「ううう、緊張するね」

「ハル、顔色悪いよ? 大丈夫?」

「……大丈夫!」


 心配顔にガッツポーズをした。


「そっか、わかった。無理はしないで」

「ありがと、わかった」


 そういう秋人君も緊張をしている。

 

 けれど。






 俺が言い出しっぺだから。






 今日のために二人で動いてて、壁にぶつかるたびにそう言っては自分を奮い立たせていた秋人君が、私のことも引っ張ってくれた。


 引き締まった表情も、頼もしい。


「ごめんね遥ちゃん。無理しなくていいのよ?」


 圭太さんのお母さん、友部友梨ともべゆりさん。


「私たちが伊万里ちゃんに伝えなきゃならない事なのに」


 友梨さんは顔を曇らせる。


「大切ないまちゃんのことですし。ね、秋人君」

「うん。……もともとは俺が気になって勝手に動き回った結果ですし、差し支えなかったら、最後まで見届けさせてもらいたいです」

 「私たちにきっかけをくれて、骨を折ってくれてありがとう」


 友梨さんに続いて、圭太さんのお父さん、雄一郎さんと圭太さんが頭を下げた。


「お二人とも本当にありがとうございます。叩かれても、許してもらえなくても、とにかく謝ろうと思います」


 友部圭太けいたさん。

 いまちゃんに合わせたい人。


「ひゃあ?! 私達に敬語はいらないですよ!」


 透き通るような肌を少し紅潮させ、圭太さんが唇を噛みしめている。いまちゃんと同い年の、先輩だ。


 優しげな顔立ちと穏やかな話し方は……なるほど、いまちゃんの好きな人はこんな感じなんだ……と思う。


 今日、どんな再会になるのかはわからない。


 怒ってケンカ別れになるかもしれない。事情を知った上で、受け入れるかもしれない。でも全て、たられば、の話だ。


 いまちゃんが真実を拒絶したらそれは仕方がないことだと思う。

 それだけ、大きな事実なのだ。


 でも。


 圭太さんとの再会が、いまちゃんにとっていい結果になればいいとは思うのだ。



 少しずついろいろなお話をしながら歩いた。


 そして。


 いまちゃんの家のそばまで行って。

 私達は立ち止まる。


 立ち止まらざるを得なかった。






「……………………」






 いまちゃんは、家の前で待ちかまえていた。


 腕を組んで。

 塀に背中をもたせかけて。


「いまちゃん?!」

「いまさん!」

「「伊万里ちゃん!」」

「伊万里……」


 無表情。

 いつもの目力めぢからが消えた、いまちゃん。


 見たことのないいまちゃんの表情に、言葉が続かない。


「……入れよ」


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