桜並木の下

 

 桜並木の下。

 同じ制服で並んで歩く私といまちゃん。


「だい!だい!ダイナマイトっ!か……ほんっとカッコいいな、ハルは」

「言ってないよ!」


 だははー! と笑ういまちゃんの制服の袖を掴む。頬を膨らませていると、ふと周りが気になった。


 私達を。

 いや、いまちゃんを見てる人がいっぱいいた。


 誇らしくて、うれしくなる。

 ステキで可愛くてカッコいい私の従姉妹。


 と、その時。


「ハル、いまさーん!」


 秋人あきと君の声が聞こえた。

 私たちは同時にふり返る。


「もうどこから見ても姉妹っス。この前も間違えられたんですよね?」

「!!」


 いまちゃんと私が姉妹に見えるなんて、嬉しすぎて口元が緩んでしまう。

 

「わかっちゃねえな秋。彼女と他の女の見分けつかねえとか、大減点だぜ?」

「いえいえ、俺は見分けつきますよ?」

「ほー。あたしがハルだよ、見て見て♡」

「うわあ?!」


 秋人君の近くでいまちゃんが、腕で胸を強調する。秋人君の制服の袖を、ぐぐぅ! と掴んでしまった。


「秋人君、私の目を見て答えてっ!」

「は、はい」

「ふわふわのふにふにがいいんだ、ぽよぽよがいいんだ……!」

「何故俺がごめんなさいする流れになった?!」

「心配すんな! あたしの胸、高校から成長したんたぜ?」

「ふおおお……!」

「男子がここに、目の前にいますよー」



 あの日、秋人君の涙が止まった後。


 本当の気持ちを伝えた後に大泣きし続けた私に、秋人君はずっとずっと、背中と肩を優しく撫でてくれていた。


『今日、一緒に帰らない? ずっと話せてなくて、話したいことが山ほどあるんだ』


 そう言ってくれて。

 そう、言ってくれて。


 仲直りできたんだって実感できたことに、私がもっと大声で嬉し泣きして、藤倉君を待ってた金澤君たちまでまきこんで。


 そして。


 前よりもっと楽しく過ごす事ができた藤倉君と日々の中、迎えた卒業式の日に……私たちは、想いを形に変えた。

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