親友

「及川さん」

「……っ!!!」


 黙っていた金澤君の声に、体が震えた。


 でも、ここは動けない。

 怖いけど、下がらない。

 

 絶対に、ここは気持ちで負けたらダメなんだ。

 絶対に。


「まずは、謝らせてほしい。あと、少しだけ時間を下さい」

「え?」

「ごめん!」

「ごめんなさい!」

「さーせんっしたぁ!」

「え? え?」


 金澤君、眞白君、佐藤君の声が重なって響いた。

 

「及川さんを泣かすつもりはなかったんだ。本当にごめん」


 金澤君たちが、座り込んでいる藤倉君のそばに歩いていく。


「イヤな言い方、悪かった。でも一番大事なこと、言えてないだろ」

「金澤……」

「いい加減、腹決めろ」

「…………」

「ここがターニングポイントだ。心が折れてなきゃいくらでも踏ん張れるだろ? へったくそな応援で悪いが、また格好いいとこ見せてくれよ」

「……!!」

「俺らにしてやれるのはここまでだ。だから、ここから先はお前次第。絶対に自分に負けんなよ? 期待してるぜ、親友!」


 藤倉君と私に頭を下げたあと、三人が離れていく。よくわからなけど、最後の「親友」っていう言葉にホッとした。


 そして、同時に。


 藤倉君が私に言いたいこと、という言葉に鳥肌が立っている。


 私が言いたいことは伝えられた。

 あとは……藤倉君が言うことを全力で聞く。


 それがどんな言葉であっても、ウソをついた私がいけない。


 言った言葉は、取り消せない。

 好きな人を悲しませた事実も……取り消せない。


 だから。


 受け止める。

 全力で。


 


 

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