置いてかないで!

 言葉がうまく出てこない。

 涙だけが止まらない。


 金澤君や藤倉君がどんな表情をしているか、ぼやけてわからない。何言ってんだこいつってみんなで思っているのかもしれない。


 気持ちが。

 気持ちだけが。

 胸の奥でぐわんぐわんと音を立てて、空回りしてる。


 だけど、言いたい。


 藤倉君がどれだけ、テニスに部活、友達を大事にしているか、きっとあなた達は知らないんだ。


 それに。 


 誰だって、落ち込む時はあるでしょ?

 どうしたらいいかわからない時って、ない?


 朝起きて、ため息をついて。

 一日中悩んで、考えて。

 

 布団に入っても、眠れなくって。

 また朝起きて、ボンヤリと下を向いて。


 モヤモヤして。

 苦しくって。


 下を向いて。

 泣いて。


 そんな、ため息ばっかりの毎日。


 あなた達だって、辛い時ない?

 誰かに支えてもらいたい時ってないの?


 助けてもらったことだって、あるはずだよ。


 もう私には、できないから。藤倉君のそばにいる資格を、自分でなくしちゃったから。


 友達でしょ?

 仲間、なんでしょ?


 藤倉君を、置いてかないで!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る