ゲームセット、お疲れ。

「で、でも、俺が及川さんのそばにいたら、また悲しませ……」

「フジ。ゲームセット、お疲れ。っていうか何なのお前?」

「……え? あ、あの……」


 いつの間にか私たちに近寄ってきていた男子が、藤倉君に話しかけている。さっき藤倉君と立ち話をしていたテニス部の人だ。


「……金澤かなざわ


 藤倉君が納得のいかなそうな表情で金澤君を見ている。その金澤君の後ろで眞白君と佐藤君が、冷たく藤倉君を睨む。


 この人達はさっき、藤倉君と私がちゃんと話せるように応援してくれてたのに……どうして?


「ごめん及川さん、話に割り込んで。コイツに少しだけいいかな」

「え?」

「僕達、どうしても言いたいことがあって」

「及川ちゃんごめん! ちょっと待っててな!」

「……何なんだよお前ら」


 私のこと、知ってるの? ……テニス部でも修学旅行での私の話が噂になっているのかも。


 また一つ、自分のしたことが返ってきてる。

 バカな私に。

 ウソつきな私に。


「……なあ。マジで何言ってんのかわかんねえし、話の途中で」

「フジ。部活や試合の時に、お前誰よりも声出して応援するよな」

「は? ホンそれ、今する話じゃないだろ!」

「『諦めるな、まずは一本、一本!』とか『こっから!』とかさ。俺らは苦しい時に何度励まされたかわからない」


 金澤君のそばで、二人が何度も頷いている。


 テニスの話?


 私には金澤君が何を言おうとしてるのかわからないけれど、真剣な表情に言葉が出てこない。ピリピリとした空気に、喉が鳴る。


「でもな。今のお前は何なんだよ」

「金澤! いい加減に……」

「全力の相手から逃げるような奴の応援なんか、いらねえんだよ!」

「しろっ?! …………なっ!」

「自分ができもしないことをえっらそうに……! さっきから聞いてりゃお前、何をグダグダと言ってんだよ! 無理無理。見てて腹立つわ、この根性なし」


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