明日後悔するお前がいるなら、今日のお前が何とかしてやれよ。できんだろ?

 声が、出せない。


 震えが。

 涙が。

 止まらない。


 そんな。

 そんなことって。


「泣かせちまって悪いな。でも、あるんだよ。あったんだよ。ドラマのようで、ウソみてえで、夢みてえで。でも、圭太と二度と会えないっていう現実は何一つ変わらなかった」


 どれだけ辛かったんだろう。

 悲しんだんだろう。


 それなのに、私が相談したせいでまた、辛い気持ちに!


「いまちゃん……! ごめんなさい! ごめん……なさ……」




 ふわっ。


 ふわり、ふわり。




 いまちゃんが、私の頭を撫でている。


「泣くな。そうじゃねえ。そうじゃねえんだ。こんなあたしだからこそ、言ってやれることがあると思っただけだ。ハル、お前も聞いてくれ。そうやって毎日後悔してるうちに、問題が勝手に解決すると思うか?」


 その言葉に私は、ふるふる、と横に首を振る。


「後悔するってわかってて、ソイツはどうして黙ってられんだ? 結局は元通りになれなくっても、嫌われても、どうにかしてえんだろ?」


 今度は首をタテに振る。


「あたしと同じことが絶対に起きないって保障はねえ。自分の頭で考えるハッピーやアンラッキーを、現実は簡単に超えてきやがる……!」


 声を震わせるいまちゃんの服を掴んで、必死にうなずく。


「でも、まだ間に合う。叫んで泣いて嫌われたって、手を伸ばしゃあどんな結果だってまだソイツの前にある。ゼロじゃねえ! ゼロじゃねえだろうがよ! こっから覚悟を決めて踏ん張れば、どんな結末だって! 未来だって! 掴むことができんじゃねえか!」

 

 その声はところどころ、震えてかすれてて。


「言ってやれ。明日後悔するお前がいるなら、今日のお前が何とかしてやれよ。できんだろ? ってな。何かをどうしてもどうにかしたいなら、明日じゃなくて今、歯を食いしばれ。あたしみたいに手遅れになる前に、やれることがあるうちにな。泣くのはあとだ」


 そして。


 私の身体も、心も、震える。


 もうジッとしてられない。


「いまちゃん、ごめん! 私、行ってくる!」

「ああ。頑張ってこい、

「………!! うん!」


 いまちゃんの言葉を胸に、家を飛び出した。



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