そうだ。いまちゃんなら……

 修学旅行の前までは、本当に楽しかった。


 藤倉君を見ててたまに目が合ったりすると、『どうしたの?』って笑ってくれたり、話しかけてきてくれたり、変顔で私を笑わせてくれた。いっぱい楽しい話ができた。



 それが。



 今は目が合うたびに。


 藤倉君が慌てて目をそらすようになった。

 しまった、みたいな顔をして。


 目が、合ってしまった。

 そんな、顔をして。


 涙が出る。

 胸が、ぎゅうって痛む。

 

 でも。


 涙をごしごしとふいて、隠しさないといけない。


 だって。

 私のウソで、傷つけたから。

 

 大好きな藤倉君を傷つけた。


 ずっとずっと片想いしていた藤倉君を。

 一生懸命で、柔らかく温かい笑顔の藤倉君を。

 あんなに優しい藤倉君を。


 傷つけた。


 私があんなことを言ったからだ。


 本当なら、もっと楽しい修学旅行になってた。可愛いおみくじが売ってる神社のことを話したら、『僕も気になる! 買ってみたい!』って言ってくれてたのに。二人きりで行けたかもしれないチャンス。


 嬉しすぎて、ぴょんぴょんって跳びはねたら、それを見た藤倉君も私のマネをして、ぴょんってとんでから笑ってくれた。


 あんなに……笑って……くれてたのに。



 苦しい。

 苦しい。

 

 どうしたらいいの?

 どうしたら、前みたいに笑ってくれる?

 

 どうしたら……許してもらえるの?


 ごめんなさいって言いたい。

 けど、勇気が出ない。


 あの藤倉君が、冷たい目で私を見たらって思うと、怖い。怖いの。


 でも、このまま終わっちゃうのは絶対にイヤだ。


 だれかに相談…………そうだ。


 いまちゃんなら。


 きっといまちゃんなら……。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る