そうだ。いまちゃんなら……
修学旅行の前までは、本当に楽しかった。
藤倉君を見ててたまに目が合ったりすると、『どうしたの?』って笑ってくれたり、話しかけてきてくれたり、変顔で私を笑わせてくれた。いっぱい楽しい話ができた。
それが。
今は目が合うたびに。
藤倉君が慌てて目をそらすようになった。
しまった、みたいな顔をして。
目が、合ってしまった。
そんな、顔をして。
涙が出る。
胸が、ぎゅうって痛む。
でも。
涙をごしごしとふいて、隠しさないといけない。
だって。
私のウソで、傷つけたから。
大好きな藤倉君を傷つけた。
ずっとずっと片想いしていた藤倉君を。
一生懸命で、柔らかく温かい笑顔の藤倉君を。
あんなに優しい藤倉君を。
傷つけた。
私があんなことを言ったからだ。
本当なら、もっと楽しい修学旅行になってた。可愛いおみくじが売ってる神社のことを話したら、『僕も気になる! 買ってみたい!』って言ってくれてたのに。二人きりで行けたかもしれないチャンス。
嬉しすぎて、ぴょんぴょんって跳びはねたら、それを見た藤倉君も私のマネをして、ぴょんってとんでから笑ってくれた。
あんなに……笑って……くれてたのに。
●
苦しい。
苦しい。
どうしたらいいの?
どうしたら、前みたいに笑ってくれる?
どうしたら……許してもらえるの?
ごめんなさいって言いたい。
けど、勇気が出ない。
あの藤倉君が、冷たい目で私を見たらって思うと、怖い。怖いの。
でも、このまま終わっちゃうのは絶対にイヤだ。
だれかに相談…………そうだ。
いまちゃんなら。
きっといまちゃんなら……。
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