藤倉君が、いて。

 畳の上で、一緒にジタバタともがく男子たち。


 後から聞いた話だと、『大食堂、みんなで一緒に行こうぜ!』って私達をさそいに来てくれたらしい。


 そうしたら部屋での私たちの恋バナが聞こえてきて、ノックもできずに外で聞いていたらしい。男子達はたまたま、聞いてしまっただけだ。





 でも。


 でも。


 そこには。


 藤倉君が、いて。








 修学旅行から一週間。今日も学校からの帰り道を、トボトボと歩くしかできない。


 何で私、あんなことを言っちゃったんだろう。


 何とも思ってない訳、ないのに。

 ずっとずっと、大好きなのに。

 小学校からずっと……。


 あの時間に戻れたら、いいのに。戻れたら……絶対に絶対に、あんなウソつかない。


 藤倉君の事、大好きって言えなくても……気になるって。気になってるのって言うのに……。


 目の周りがヒリヒリする。

 あれから、ひとりの時は泣いてばっかり。


 泣いても解決なんかしない。

 私が藤倉君を傷つけたってことは消せない。


 消せないんだ。

 




 修学旅行から帰ってきて。


 学校に行ったらみんなに冷たい目で見られるんじゃないかと思っていたけれど、逆だった。


 あの時にいたみんなは、優しかった。




「うーん、私のカンは外れたか……遥ちゃん、本当にごめんね~」

「及川さんも私たちと一緒! とか勝手に思っちゃってたよ……」

「だいたいさ、女は何でも恋に結びつけすぎなんだよな」

「なによ! 外でこっそり聞いてたアンタがえっらそうに言うな!」

「そーだよ! どうせ『自分の名前出ないかな』とか思ってたんでしょ!」

「そんな事思ってねねねねえよ! な、田中ぁ!」

「お、おう! ここここ、これっぽっちも思ってないよ?!」

「アンタ達、怪しすぎだよ……」




 そんな感じで、旅行後に何回かそんな話をしたくらいで終わりだった。


 もちろん。


 そんな優しくて温かい言葉を通りこしてくる冷たい目もあって、そんな時、私は頭を下げる事しかできなくて。


 だけど、それ以上に。

 大きく変わってしまったことがある。


 それは……藤倉君と私の、距離感。


 

 悪いのは私で、泣きたいのは藤倉君で。


 わかってる。

 わかってるよ?


 早くごめんなさいをしなきゃいけないのも、藤倉君にキラわれたんだってことも。


 わかってる。

 わかってるの。


 でも、今は。


 涙の止め方を……だれか、教えて、下さい。



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