【第31回電撃応募作品】どんな明日が待ちかまえていようとも、少女は歯を食いしばって今日を走った。
マクスウェルの仔猫
藤倉君が好きとか……そんなんじゃない!
修学旅行の、初日。
思い出すたびに、涙が出そうになる。
でも、私が泣いていい訳がない。
傷つけたのは私で。
傷ついたのは藤倉君で。
あの時の、藤倉君の苦笑いを思い出すたび、胸が張りさけそうになる。
私は。
自分の片想いを、自分で
●
あの日。
夜ご飯前に部屋で誰かが修学旅行中に告白するって言って、恋バナが始まった。
「えー! 桜、とうとう告白するんだ!」
「おー! 応援してよね!」
きゃあきゃあと盛り上がる中、私に話が振られた。
「
「……えっ」
ボンヤリとジャージに着替えていた私。
誰にも言ってなかったはずの片想いと、好きな男の子の名前が出てきたことに、息が詰まった。
「えー!
「にぶー! 遥ちゃん、藤倉のことよく見てるし、藤倉以外の他の男子と話あんまりしないじゃん」
「えっ……えっ?」
私は、内緒にしていた片想いがみんなにバレてしまっている事に
「ダブルデートで盛り上げるのもアリじゃない?」
「ね、ね! 藤倉のどこが好きなの?」
みんなから問いつめられた私はあの時。
思ってもいないことを叫んでしまった。
「わ、私! 藤倉君が好きとか……そんなんじゃない!」
私が、そう言った瞬間。
部屋が、しーん、となって。
そして。
バターン!!
どたたたたたっ!
フスマが倒れて、男子たちが部屋になだれこんできた。
「いってー!」
「うわー?!」
「重いっつの! 早くどけ!」
突然の事に、男子と私たちの悲鳴が重なった。
「きゃー!」
「何やってんのよアンタたち!!」
「サイテー!!」
●
悲鳴や叫び、騒がしい物音の中。
私は騒ぎどころではなく、立ちつくしていた。
倒れ込む男子たちの後ろに、私と同じように立ちつくす。
そんな藤倉君が、見えた、から。
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