第4話
次の日からも、白いリボンの捜索は続いた。
昼間は吸血鬼が一本一本モミの木を観察し、朔が合流してからは、一本の木を上部と下部に分けて担当する。朔が懐中電灯を持ってきてからは少しスピードが上がったが、それでもあまり夜遅くまで彼女を拘束するわけにはいかない。二人で行動できるのはせいぜい数時間。モミの木が想定より多く、しかも大きいので、一件目の教会の敷地を
「……これは、間に合わないかもしれないなあ」
吸血鬼が、疲れを吐息に乗せながら言う。体力的なものではなく、精神的な疲れである。クリスマスまで、あと二週間もない。残り二つの教会のモミの木が少なければいいが、もし間に合わなかったら、本当に骨折り損というやつだ。
「まあ、最初からダメもとだったし。それに、教会の近くにあったモミの木ってだけで、敷地内かどうかは定かじゃないんだ」
「……ああ、そういえばそうだったかも……」
どこのモミの木かもはっきりしない、すでに跡形もないかもしれないものを探すという、雲をつかむかのような話。なのに、そんな話をする朔の顔に疲れは見られない。
どうしても探したいという割には、焦りが見え隠れしないのは不思議に思える。
「若いから? ……いやいや、
「全然うまくない。マイナス50点」
「辛辣すぎる!」
悲鳴を上げる吸血鬼に少しだけ笑うと、朔はスマホを取り出した。教会の写真を眺めて考えこむ彼女に
「次はここか。うーん、ここは確か、モミの木の本数はそれほど多くなかった気がする。よし、これならなんとか――」
少しやる気を取り戻した吸血鬼に、朔が、ふと、疑問を投げかけた。
「……あ、そういえば、俺あんまり、モミの木と他の針葉樹の区別ってつかないんだけど、普通の人って、どうなのかな? ちゃんとわかってるもんなのか? モミの木に結んだって話、信用できると思う?」
吸血鬼の目が点になる。
爆弾投下。――直撃。せっかくかき集めたやる気が粉々に。
「――ここにきてそんな絶望的な話、する!?」
むしろ朔は、自分をいじめるために来ているのだろうか。
そんなふうに思いながら、吸血鬼は頭を抱えた。
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