向精神薬
ひなた、
1日目夜
その日の夜、映画を見た。
恋人が駆け落ちをして隣町で銀行強盗をするという物語。銀行に乗り込みお金を手に入れるも男は撃たれる。お腹から血が流れる。男と女は隣町の隣の隣のモーテルに駆け込む。2人はベットの上でキスをする。女は男の血だらけの包帯の上から傷にキスをする。男は死ぬのが怖いと泣く。女はひたすらに傷を包帯の上からキスをする。男は近くのドラックストアで薬を買ってきてほしいと頼む。女はモーテルの近くのドラックストアに駆け込んで血のついた札束をレジ打ちに投げて、両手いっぱいに薬を抱えてモーテルに戻る。女は動かなくなった男の腕に注射針を使ってあるったけの薬を打ち込んでいく。女は注射針を自分の腕に刺し血を吸い出す。その血を男の腕から流し込む。女も男も腕は針の跡で血だらけになっていく。女は貧血か男のお腹の上に倒れ込む。そして包帯を剥ぎ取り傷にキスをして映画は終わる。
自分は映画で泣いたことがない。小学生くらいまではそれがステータスで誇るべきものの一つとしてしっかりとしたアイデンティティの一柱だった。けれど今となってはそれが恥ずかしい自分の一面として数えられている。
何にせよ今見た映画は好きだ。B級だから映像に迫力もカメラロールもままならないし画質も少し悪い。でも一つだけラストの内容の画素だけはよかった。
月額500円ちょっとのアプリをとじる。スマホで見ているせいで見が疲れるし、首も痛い。スマホの画面の右上の時計が言うには丑三つ時。掛け布団から少しはみ出た足をしっかりと布団の中に収める。これと言って怖くはないけど、時間が時間だから自分をそうさせる。何かが自分の足を引っ張るかもなんて想像を膨らまさせられる。
部屋の光を消す。眠りにつく前に部屋のカーテンだけを開けておく。朝は陽の光を一番に浴びたいから。
ブルーライトを浴びたせいだろう、目を瞑ってもなかなか眠れない。羊の数を数え始めるも十やそこらでやめてしまった。元来、単純作業みたいなことをすると体が疼く。親からは多動症、友達からは脳みそが半分だけ野生と言われてるからはやく治したい。
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