93話 罪咎ー7

シュゥ

白煙が立ち込める大通り

「大丈夫かあんた」

雷を纏う男が倒れた女性に近寄る

「あなたは…」

青髪をなびかせ黒い服を着る男

「俺はレイド、あんたを守りにきたんだ」

「間に合ってよかったぜ」

レイドの笑顔に見惚れる女

「なんで俺を攻撃するんだ」

向こうには刀を構える人種

「なんでだ?お前がこの子を殺そうとしたからに決まってんだろ犯人」

はぁ

「俺はそいつを守ろうとしただけだ、そこに……?」

カムナギの指差す方を向くと

そこに死体は無かった

!!

ドォォォォン!!

「なんだ!?」

建物の向こうから聞こえる轟音

(あっちは…ユジィ達の方か)

「くそ…なんでこんな時に次々と」

「あんた家はどこだ」

レイドは女に話しかける

「え…エスク通りです」

「よし!捕まってろよ」

ドサ

「おわ!」

レイドは女をおぶる

「じゃあ行く…!」

ヒュ…

バキ!!

「あっぶね!!」

レイドの目の前には斬撃が通過する

「何すんだテメェ!!!」

「何する?お前がその子を攫おうとしてるからだろうが」

ビキ!

レイドの額に浮かぶ血管

「あぁ!?テメェから守ろうとしてんだろうが!」

ふっ

「お前が善人という確証はない、だからその子を渡すわけにはいかねぇんだ」

「それが嫌なら力づくでこいよ」

ちっ

「少し待っててくれ」

レイドは女を下ろす

「そこまで言うならしっかりと向き合って…」

「ボコボコにしてやる」

バチィ!!

【獄域・界雷かいらい

雷鎧ライソウ

レイドの全身を駆け回る雷

「死なねぇ程度に殺してやるよ」

カッ

ブワ!!!

巻き起こる暴風

「そうか…じゃあ力比べしようぜ」

「英雄」

【獄域・旋迅せんじん

時津風ときつかぜ


ガッ!!


「お前、そんな強かったんだな」

「テトラとそこの黒いの」

ガラ…

通りには複数の亜人種が壁に突き刺さっている

「ま、こいつが強いんじゃなくて」

「俺が強いんだけだ、気色わりぃクソガキよ」

む…

「ちょっと!言い過ぎだよガイア!!」

ガイアというのかそいつ…名前覚えとこ

パチパチ

「さすが英雄様です!」

後ろで興奮気味のメローダ

「解域の相手をこうも容易く…さすがです」

「まぁ解域って言っても雑魚の部類だからな、そう褒められてもいい気分はしねぇな」

「せっかく褒めてくれたんだからそう言わないの!」

なんか二人の関係性が少し見えるな

「ま、こいつらは犯人じゃねぇと思うし巡回を続け…」

ドッ

ドカァァァァン!!

!!

一同は上を見上げる

バチバチ!!

ブワァン!!

「あれは…誰ですか?」

テトラは空に舞う雷と風を見上げる

一方はカムナギでもう一方は………

「はぁ…何やってんだあの人達は」

「ユジィ様は存じておられるのですか?」

「あぁ」

「カムナギと…今回の英雄くんだな」

!!

「な!なんでカムナギさんと戦ってんですか!!?」

俺が聞きたい

「おいテトラ!」

「俺らも戦いに混ざろうぜ!!」

「余計ややこしくなるでしょ!!!」

テトラの一喝でおとなしくなるガイア

バチバチ!

屋根をからみえる閃光

「どうしますかユジィ様」

心配そうに見上げるメローダ

「まぁ…度が過ぎたら止めるけど」

「カムナギも同じくらいの人種に会えて嬉しいんじゃないかな」

知らんけど

ガキン!!

衝突する拳と刀

「お前中々強いな」

飛来する雷を切り落とすカムナギ

「うるせぇ!」

ガン!

雷拳らいけんを受け止める剣腹

ギギギ

「お前…人種だろ」

「どうして人種のくせして獄域が使えんだ」

ふっ

「お前も人種だろ」

ガン!

間合いをとる両者

「う!!」

風に煽られる亜人の女

拳を握るレイド

「俺は地がちげぇんだよ」

グッ

バリッ

レイドが両手を構えると雷が収縮する

「そうか…どうやら俺も他の人種とは地が違うらしい」

バッ

ブワッ

カムナギが刀を構えると風が凪ぐ

【獄域】

界雷かいらい」「旋迅せんじん

電鳥嘴がんま」「仇風敵あだかぜ

バチバチバチ!!!!

巻き起こる雷を風

ダッ!!!!

屋根を踏み抜き両者は対立する


パッ

!!

レイドの目の前には少年

(止めれねぇ…)

(ユジィ…なんでここに)

「お前ら周りを考えろ」

【獄域・復活リザレクト

「シャクマの天幕」

ヒラッ

なびく一枚の布

(なんだ…この布………!!!)


ズパァン!!!

雷と風の両者は一枚の布に吹き飛ばされる

シュタ

尻餅をつく亜人種のレディ

「大丈夫ですか?」

壁にもたれ顔面蒼白…

「あ…あ」

ガク

「おい!」

レディの体を掴みその場に寝かせ声をかける

「大丈夫か!意識はあるか!!」

周りを見て叫ぶ

「誰か!救急車を!!」

・・・

「まぁ誰も来るわけ…」

ドッドッド

足音が聞こえる

その音は次第に大きくなり

「大丈夫か!!」

目の前には複数の亜人騎士

「あぁどうもどうも」

「お疲れさ…」

ガシャン!!

なぜ剣を向けられる?

「大人しく投降しろ!!」

………前にも似たような場面が

思い起こされるカンパレラにて人種騎士に包囲された記憶

「待て!俺は何もやってない!!」

「嘘をつけ!」

ついてない!!

「ではその女性の服についている血痕はなんだ!!」

転がるレディを見ると

背中にまぁまぁな血がついていた

「これは…なんかついてたんですよ!」

「嘘をつけ!!」

「その女性を切った何よりの証拠」

「貴様を連日殺人の容疑で捕縛する!!」

え!??

………

「一つ聞かせてほしい」

「この女性を保護したら家まで届けてくれますか!?」

・・・

「何を当たり前な事を言っているんだ貴様!!」

あっそ

とりあえず

「じゃ………またね」

ビュン!

!!??

その場からエスケーープ!

「ここ一帯を包囲しろ!!」

「犯人は140cmの人種!金髪の子供だ!!」

「エストニア全体に指名手配の用意をしろ!!!」

「ハッ!!!」


英雄探しも一筋縄ではいきませんね。

        リストエルダの神 ユジィより

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