85話 劣弱ー47

ダンダン!!

「ちょっと!シノビはどこにいるの!?」

エリダート魔道学院内で戦う耳長の女エルフ

パキン

ガシャン!!

杖を持ち魔人を凍らせるメガネをかけた頬に文様かある少年

「恐らくですがユジィ様のそばにいると思われます」

「シノビさんの事なので最優先にユジィ様を据えているたと思うので」

ドゴォン!!

「そりゃ結構じゃねぇか!」

笑いながら殴る岩男

我々守護団ガーディアンズの見せ場は縁の下あるって言ってたろ!」

「解域・結露道アイシクル

パキン

メガネを上げる少年

「そうですよ…今はカムナギ様の所に魔人種を行かせない事が我々の使命です」

ガン!

ハンマーを振り回すエルフ

「はぁ…私も英雄様のそば付きになりたいのに…」

ガタガタ

揺れる窓と震えるガラス

ドドドド!!!

「ふぅ…とりあえずここは済んだか」

岩男は外を見る

「そば付きなんて……俺達にはまだ務まんねぇよ」

「あの方達は支えるのもおこがましい程に」

「強すぎる」

ガン!

ババババ!!

飛来する黒波動を切り伏せる

「初戦にしては上出来だな」

静かに刀を振るうカムナギ

ボッ

ダンダン!!!

黒波動ネロ・オーラを飛ばし間合いを保つクラリア

(なんだこいつ…剣筋が見えない)

ピタ

足を止めるクラリア

「はぁ…もういいか」

「人種に使いたくはなかったけど…使うか」

ールミナスの淵魔眼えんまがん

ゾワ!!

異様な気配を感じ取るカムナギ

(いよいよ本領って所か…なら)

グッ

カムナギは刀に神経を馴染ませる

聖遺物アーティファクトは真の名を呼ぶことで才を発揮する…だったか)

「龍刀・ばさ……」

バキ!!

「なんだ!!」

空を見上げると空間に亀裂が入る

……ボッ

裂け目から噴き出る二色の炎

ちっ

「だから奴は信用ならん」

ボワ!

クラリアの下に漂う白い煙

「クラリア様…帰還命令でございます」

煙から聞こえる少女の声

「そうか、了解した」

シュゥゥ

煙に消えていくクラリア

「人種…あと少しの安息を噛み締めろ」

……

姿を消すクラリア

・・・

刀を納めるカムナギ

「なんだったんだ……!」

バキバキ!!!!

空の切れ目は肥大化し一面を覆う

「おいおい…何が起きてんだ」

パキ…

!!

「あいつ…」

切れ目から降下するのは金髪の少年

「ユジィ!!」

パッ

空中でユジィをキャッチし対岸の校舎に着地

「ユジィ…大丈夫か」

・・・

「ユジィ!!」

………

誰かの声が聞こえる

薄れる記憶の中、草木が揺れる音が鮮明に響く

「馬鹿者!!それで神格を扱えると思っているのか!!」

バシ!

頭に響く鈍痛

「いっ……てぇな!!少しは手加減しろよ悪魔!!」

ゴワン

4本腕にそれぞれ武具を持つ大男

「バカいえ…我は貴様を立派な神に育てるために使わされたのだぞ!!」

「日本で腑抜けた貴様に武術を教える任を全うするのだ!!」

ちっ

うるせぇ

「どうせ卒業したら記憶なくなるし少しはストレス発散してもいいとか思ってんだろ!!この悪魔」

「バカもん!!」

ドン!

「がは…」

頬にめり込む灰色の拳

「どは!!」

「ゆずりよ…我々は貴様らに非業の死を回避して欲しくて教えを解いているのだ」

「神になるという事はそれだけ修羅の道、お前はここで全ての基礎を学ばなければいけない」

「わかるな?」

・・・

「俺は…ただゆっくりと生きたいだけなんだ」

「別に強さなんて求めてない」

「かぁーつ!!」

また来る!怒りの鉄槌!!

……

ぽん

頭に乗るゴツゴツした手

「ゆずりよ…自由に生きるという事は全てを理解しなければ成し得ないのだ」

「どんな不測の事態も、想定外の事象も、規格外の世界も全て己が範囲に収めて真に自由を得られる」

「楽をするには辛さを受け入れるしかない」

……

「死んでまで修行したくない…です」

ふっ

「はははは!!!」

「なら他の奴らと相談して来い…同じ境遇の奴らと話すだけでも気分が落ち着くだろ」

またこれか

先生は弱音を吐くといつもの怒号ではなく仲間と話してこいと諭す

26にもなって諭されるとは…悔しい

……

草木が巻き付いた白い巨柱が連なる廊下

空には大きくかかる虹が数本

所々に浮いている窓がついた柱

天聖宮てんせいぐうー釈天の間ー

ギィィ

「あ!ゆずり」

「武術は終わったの?」

部屋にいる2人の少年少女

ぽんぽん

頭を撫でてくれる少女

「大丈夫だった?先生ゆずり君に厳しいから見てて心配なんだよ」

タッ

机から降りる少年

「いやいやあれでも優しい方だろ」

「俺の先生なんて初手魔法で殺されそうになったぜ」

「異世界に行くには魔法を理解しろ!…だってさ」

………

??

「ゆずり?」「ゆずり君?」

・・・

「「なんで泣いてるの?」」


………

目を開けると見慣れた学院の保健室

ズキン

あたまが痛い……

「……おれ」

「なんか懐かしい夢を…見ていたような?」


魔人領「セクター」

魔王城

「旧友には会えたか?神官」

ポタ

滴る血

「まぁね…でも君が計画を中止するとは思わなかったよ」

「魔王セイクリッド・ファーストともあろう方がね」

ふふ

「戦局を見抜き利益を最大化させることが指揮官の任務だからな」

「今回はこれで満足だよ」

カラン

小瓶の中には黒い結晶

「それは聖霊の破片かな?」

ふっ

「そうだ…クラリアにしては上出来だと私は思っている」

「これを使い我々の悲願を成就させる」

クラリアはもげた腕をくっつける

「人種を使った祭儀もやり直し」

「残念だったな、セイクリッド」

小瓶をしまう魔王

「あんなのはいつでも変えが効く、それにあの依代も軍事侵攻により人種領で出土した物」

「祭儀中止によるマイナスよりこの聖霊の破片という大きなプラスを手に取ることができたのだ」

「十分な成果は出ているさ」

ふっ

「それなら何よりだ」

……

「傷心の所すまないが…立ち会ってくれるか?」

「もちろんだよ、世界の行く末は見守らないと」

暗がりの廊下を進む

その先に塞がる大扉

ギィィ


部屋には円卓

周りに座る4体の生命

ドン!

魔王は6席の中の1席に座る

「これより【終天議会エスカトロジー】を始める」

「召集に応じてくれた終末点各位には感謝をのべる」

円卓に座るそれぞれに終末点

「此度は私「魔王」が仕切らせてもらう」

「議題は【世界の王】について」

「熱い議論を期待する」


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