10話 双子ー9

「悪かったって…謝るから…やめてくれ」

ドン!

カンカンカン

踏み切り近くの路地 江藤ゆずり高校1年の夏

「なんで他校のお前らが京介をいじめてんだよ」

「それに高2って…学年もちげぇし」

グイ!!

「話してくれるよな……あぁ!!??」

「いぃ!!」

京介がいじめられ学校に行かなくなって俺はいじめた張本人を探した

蓋を開けたら京介のクラスメートの兄達が京介をいじめていた

腹が立った

ムカついた

なんで優しい弟がこんな奴らのために家で泣いてるのかわからなかった

京介は優しいから俺や母さん父さんに心配かけたくなくて自分で全てを背負っていた

それが許せなかった、一回でも頼って欲しかった何も考えずに抗って欲しかった

だから代わりに殴った

泣くまで、おこなった事を後悔するまで、過ちを認めるまで

ドン!

その後俺は停学になり京介は家に籠った……そういえば結局あいつらはどうなったんだっけか…

・・・

「ユジィ?」

……

「大丈夫か?」

「あ……おう」

手に染み込む血

「悪い、少し考え事をな」

目の前にあるモニターと机に置かれた魔法石

これは…

机には無数の穴とそれを繋ぐ動線

「ここに魔法石をはめれば作動するわけか」

机の下に鍵付きの箱、中からは魔法石から出る波動を感じる

「ユジィ、これはなんなんだ?」

「これは牢屋にいる奴らを一斉に殺せる装置みたいなものだ」

「は!?」

「机にある穴に魔法石をはめれば線から魔力が伝わり別室の装置が作動する」

「多分有事の際に奴隷が逃げないように殺すために作ったんだろう」

………

「よし行こう」

……

「どうしたイオ」

うつむくイオ

「なんで俺達がこんな目に遭わなきゃいけないんだ」

「何もしてないだろ…俺たち」

・・・

「お前はやり返したいのか」

「え……」

「お前は今の状況を変えるために…変えられるならやり返したいのか?」

イオの気持ちが知りたい、このクソみたいな状況を仕方がないと背負い諦めるのか

それともどんなになろうと変える意思があるのか…

「変えたいよ」

「俺は自由に生きれるなら…生きたいと思えようになるならなんだってする」

「終末点だって殺して見せる」

「教えてくれユジィ、神様は俺に何を求めるんだ」

会った時はどうかと思ったけど、まぁこれなら

「神はお前に英雄の素養を見出してる」

「終末点の一角を打倒し人種の安寧を導き出し先導せよと」

グッ

「わかった…神様の言葉を信じる」

「俺がこの世界を救って見せる!!」

パチパチパチ

ポロ

涙で前が見えない

「う……その言葉を聞きたかった!」

「いいぞ!未来の英雄!!」

・・・・

突き上げた拳を戻す英雄

「いや…そう言われると照れる」

「……そうか」

「ではイオ、まずは君の妹を助けに行こう」

「今回は俺がやるから見て勉強してくれよ」

「おう!」


シャァァ

薄ピンクのカーテンが開く

「メイ…気分はどうだ?」

「何かあったら私に言ってくれよ、君の夫としてできることは全てしよう」

ニチャ

不敵に笑みをこぼすネズミ獣人

・・・

「人種が嫌いなら、私を殺せばいい」

暗がりの部屋に座る銀色長髪の少女

「今までみたいに壊せばいい、領域守護者「獣刻のジェルミ」」

チチチチチィ!!

笑い声を上げるジェルミ

「バカ言うなメイ」

「君は特別、人種で解域を扱えるなんて聞いたことがない」

「君と交配して子を儲ければ世界初の冥域の使い手になるかもしれないんだぞ!!」

少女の体をまさぐるネズミ

・・・

「死ね、獣人」

チチチ

「君は解域・臨界を使えるのだろう?」

ピク

チチチチチ!

「気づいてないと思ったのかメイ」

「魔法域が次の段域に行く時に起こる奥義「臨界」」

「魔法域を使い続けその真髄を見た者にのみ扱える魔法…まぁいい」

「時間はある…じっくりと愛を育もう」

ガチャ

………

ギュ

ポタ


ポタ

「助けて……お兄ちゃん」


「なぁユジィ」

「あ?」

「お前はどの魔法域まで使えるんだよ」

……

「さっき見せたろ」

「さっきのやつだと強いって事しかわらなかった」

まだまだだな…

「俺は獄域かな…知らんけど」

一応終末点の一個前くらいにしておくか

「ユジィは臨界ってどうやって習得したんだ?」

臨界ねぇ…正直最初から神域使えたからなんとも言えん

「まぁ魔法を使って自分の解釈が広がった時かな?」

「へぇ…よくわかんない」

「まぁお前も習得できるさ」

「時間はある、しっかりと戦いを叩き込んでやるよ」

……

「あぁ、頑張るよ」

地表に続く部屋を捜索

牢を出てから1時間くらい過ぎたか…

ザッ

「あの先だな」

一本の通路の先にある魔法製の扉

さてどうしたものか…これを破れば少なからず異変は上に伝わる

このまま行ってもいいが…

「ユジィ」

「俺の魔法知ってるんだろ?」

「あぁ…業化だっけか」

頷くイオ

「体内組織を減らしてダメージを受け入れる魔法」

「一回なら解域の魔法を受け止める、お前の合図でいい使ってくれ」

ぽん

緊迫するイオの頭に手を乗せる

「な…急に何すんだよ」

「そう気張るな…安心しろよ」

「大好きな妹はしっかり救ってやるから」

パン!

「別に…大好きとかじゃねぇ」

「あいつしか家族いねぇから…仕方がなくだ」

無理がある

あんな自分より生きてほしいとか言っておきながらシスコンを否定するのは無理無理

「なぁイオ」

「お前の固有魔法の「転身」は使えないのか?」

「・・・」

転身:対象の生命と入れ替わる

恐らくこの魔法の対象は妹、レーダーが二つに分かれた理由は一つ

この2人は揃うことで力の本領を発揮する

「今は無理だ」

今は…ね

「前はできてたのか?」

イオの表情が曇る

「できた…できてたけど出来なくなった」

「多分…あいつが転身を拒絶してる」

なるほど、両者合意の上という条件があるのか

「理由は俺にもわかんねぇ」

「転身が使えればあいつを…あんな野郎に触らせなかったのに」

グッ……

「まぁなんにせよ」

「妹に聞かなきゃ始まらないだろ」

「扉を出れば最後まで止まれねぇぞ…行けるか?」

「あぁ」

イオは一歩踏み出す

「絶対にメイを助けて…みんなも助ける」

「こんな地獄を生きる理由はないからな」

そうだな…そうだよな

「よし、じゃあ行くぞ!イオ!」

「おう!!」

ドン!!

扉を蹴り破りアスクリード地表へと踏み込む


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