9話 双子ー8

怯える子供達の先頭に立つ銀色短髪少年

「聞いてんのか!短足野郎!」

たん…そく…

落ち着け落ち着け

俺は大人相手は子供、しかも獣人族の強制された日々で少し言葉が荒くなってる可哀想な子供

そうだ、このくらい許してやろう……この世界の神として

「ははは」

「急にすまんな、俺は別に怪しい者じゃない」

「それは俺たちが決める」

言葉を挟む子供

「そ…そうだね、でも信じてほしい」

「僕は君たちを救いに来たんだ」

「お前みたいな雑魚……いらねぇよ」

ピキ

おっと…落ち着け

「そう言わないでくれよ…こう見えても強いよ俺?」

・・・ギン!!

クソガキの目が見開く…なるほど

今この少年は「力速りきそく」という魔法を使った…生命なら誰でも使える相手の力量を見る技

しかも技を発動する時の波長が薄い

このガキ…できる

「どっからどうみても雑魚じゃん」

「できても低域でしょ?あんた」

ビキ!!

額から聞いた事のない音が浮き出る

「じゃ…じゃあ坊主は何域かな?」

バッ!

右手を広げ俺から子供達を隠す

「俺は錬域まで扱える」

「いつか空域を体得して…あいつらを殺す」

・・・錬域?

「おま…本当に錬域なのか?」

ふっ

鼻で笑う少年

「嘘じゃない…お前なんか感知できないだろうよ」

なぜか得意げな表情…なぜ錬域でその顔ができるんだ

少年の顔に嘘は見えない…やはりまだ覚醒してないのかこいつは

それにこの部屋でクソガキと会って一つ気になることが…

「なぁ少年…お前」

「兄弟か家族が別のところに…地表にいないか?」

「な……」

唖然とするガキ

この部屋に入り真っ先に気づいたこと

それは英雄レーダーのシグナルが二手に分かれたという事

一つは真正面のガキ、もう一つは地表のどこか

「お前…なんなんだ」

「何か知ってるのか…お前」

どうしよう…こいつも驚いてるだろうがこの部屋で1番驚いてるのは俺

レーダーの感知は二つなのに英雄の直感は一つ…例え用のない違和感

……そうだ

ジィー

顔を凝視すると情報が出てくる

名前「イオ・ダブルトップ」

魔法「業化ごうか」(錬域)

固有魔法「転身てんしん

好きな食べ物「パン」

嫌いな食べ物「野菜と野菜」

以下etc


イオ…錬域というのは本当なのか

だが体に映る体魔要素たいまようそはプロアスリートくらい常人とは一線を画す

要素だけで言ったら…

「何ジロジロ見てんだオメェ!!」

ここは神の力を使おう

「落ち着けイオくん」

・・・

口を開けるイオ

「な…なんで俺の名前を」

ふぅ

「急で飲み込めないのはわかるが…」

「私は君を助けるためにきた…神の代理人としてね」

・・・

口を開けるイオ

「神の…代理?」

はは

「意味わかんねぇ…騙そうとしてんだろ」

「身長142cm体重32kg、君の魔法は「業化ごうか」」

!!

「これが私が神様から聞いた君の情報」

「ここで死ぬのもよし…生きたければ俺の手を掴め」

「出てみないか、この地獄から外の楽園に」

「そしてここにいる犠牲者も救うんだ我々の力で」

差し出す手

……

イオは差し出された手を凝視し、自然と手を前に…

「ダメだ、ついていけない」

ちっあと少しだったのに

イオの表情は晴れない

「俺が外に出ても…そこは楽園じゃない」

「そこは地獄じゃないかもだけど、牢屋だよ」

牢屋…例えこわ

「イオ、なら楽園になるために何がほしいんだ」

「できることはやろう、できることなら全て」

・・・

「妹を救いたい、俺なんかよりも生きてほしい妹が死にそうなんだ」

ポタ


ポタ

流れる少年の涙

「イオくん」

「イオ」

後ろの子供も何かを察したのか…

「妹が捕まってるのか?」

頷くイオ

その子か、英雄の片割れは

「もちろん妹も助けよう」

「無理だ」

「あんたが神の代理でも無理だ」

「なんでか聞かせてくれるか」

・・・

「妹は解域を使えるんだ……それを知ったあいつは未来の嫁にするって」

「自分の部屋に監禁してんだ」

……あいつ?

「あいつって誰だ?」

グッ

「獣王の領域守護者「獣刻のジェルミ」

領域守護者ね……この国の頭目か

「俺だって!」

声色が荒くなるイオ

「俺だってできるんならメイを助けたい…助けたいんだ!!」

「でも……」

「でも無理なんだ、領域守護者はみんな解域を使う」

「俺の錬域なんて通用しないどころか………俺もこいつらも殺されちゃう」

ふむ、なるほど

「じゃあイオ」

「領域守護者を殺せばいいのか?」

「………は?」

「だから、領域守護者を殺して妹を助ければ一緒に来てくれるのか?」

・・・

「できるのか?」

ふっ

「言っただろ」

「俺は神の代理人…神様からの言葉は絶対なんだ」

「そして神はこう言っている」

「領域守護者を殺し、イオ・ダブルトップとその妹を助け出し人種に光を……とな」

ポタ


ポタ

「本当に……本当にそう言っているのか」

「神様が…本当に?」

「あぁ、神の言葉に嘘はない」

「俺たちはただ信じて従うのみ…なぜなら神は平等に不平等を是正するからな」

・・・

ズル!

勢いよく鼻をすするイオ

「ぜせいって……なんだ?」

……

「まぁ…これから勉強してけばいいよ」


「さてだ、イオ」

「これから俺は領域守護者を抹殺するが、他に何か要望はあるか」

「え……」

「本当に殺すのか?」

この後に及んでなんだこいつは……そうか

殺した後の人種を心配してるのか、さすが未来の英雄だな!

「心配するな、ジェルミを殺しても獣王が動く可能性が薄い事がわかった」

……?

ピンと来ていないイオ

「ここに来て奴らの人種に対する認識がわかった」

「奴隷である人種の牢に鍵はかかってない+肩に埋め込まれた魔法石だけで管理ができるレベルだと思ってる」

「仮に領域守護者が人種に殺されたと聞いても獣王は本当に人種が殺したと思わないと思う」

「人種の裏にいる何かを探るからすぐには来ないだろう」

「もし人種に手を出すにしても派兵で戦況を図るくらいだ‥」

「そうじゃなくて!」

……?

「お前が殺せるわけないだろ!ジェルミに会う前に先兵に殺されるぞ」

うつむくイオ

「低域のお前じゃ死ぬだけだ…そんなの見たくない」

「もう人が死ぬのは見たくないんだよ、俺がやるからあんたは待っててくれ」

ニヤリ

仕方がない…こいつの驚く顔を見るとしようか

この地に降り立ち出会った生命が俺の魔法域を感知できていなかった、恐らくイオも神力を感知できていないのだろう

グッ

拳に力を込め意識を心に傾ける

効果範囲をこの部屋に限定し人間にもわかりやすいように示す

これが神の魔法域

ドッ…

         「神域啓示みちしるべ


ゾォワァ!!!

ドサ

崩れ落ちるイオ

「あんた……何なんだその力は」

うむ、非常に良い反応である

???

「大丈夫かイオ」

冷や汗を流すイオを見て戸惑う子供達

子供達には神域啓示みちしるべを発動していない、当てられたら耐え切れないだろうし

「あんたの名前を教えてほしい」

お?

「俺はユジィ、来てくれるかイオ」

もう一度手を差し出す

「いいのか…俺で」

「良い悪いの話じゃないんだ」

「君しかいない」

ぎゅ

「じゃあ行こうか」

「もう1人の英雄を助けに」

おっと

「その前に君たちの肩に埋まってる石を取り出そう」

!!!

「できるのかそんなこと」

「お安いご用だ、痛みなく取って見せよう」

「じゃあイオ、お前からだ」

渋々服をめくり肩を出す

「そう心配すんなよ」

肩に手を当てる

・・・

「はい終わり」

「え?」

「今終わったのか?なにやったんだ?」

すごい聞いてくるなこいつ

「何もただ肩にいある石を壊して破片が細胞を傷つけないように粒子まで砕いただけだよ」

「そんな驚く事じゃない」

「いや驚くだろ!!!」

驚愕のイオを横に子供達の石を粉砕

「じゃあ走ろうかイオ」

「……おう」

「君たちはここで待っててくれ、あとで必ず助けに来るから」

「うん!!」

ガチャ

部屋を出て通路を爆走、向かうは地表…の前に

「イオ、上に行く前に少しいいか?」

「うん」

「ちょっと有事の保険というか、ここにいる奴らの万が一を消しておきたい」

ザッ

「ユジィ、ここは?」

「万が一…というか人種を弄ぶ部屋だ」

「いいかイオ、これから俺はお前に戦いの基礎的な物を見せる」

「一回きりだからよく見ておけよ」

ゴクリ

「うん」

よし…体術は神になった時に会得した

ガチャ

部屋の中には無数のモニターと2体の獣人

「ん?だれ……」

グリィ

「がふぁ……」

ドォォォン!!!

壁にめり込む獣人

「貴様!!」

メキ

獣人の腕が巨大化

ブォン!!

ドン!

振り下ろされた剛腕を避ける

「イオ!このトカゲの魔法域はなんだ?」

「え!?」

眼を凝らすイオ

「錬……域?」

「何喋ってんだ人種がぁ!!!」

ダダダダダ!!

トカゲの蓮撃

ピタ

巨腕を受け止める小さい手

「……は?」

剛腕は勢いを失い停止する

「今の判別じゃ遅い、終末点ならとっくに殺されてるぞ」

ギギギ

「な…なんなんだお前は」

トカゲは身動きが取れない

ブシャ!

「だぁぁぁあああ!!」

ポタ


ポタ

滴り落ちるちぎれた腕

「イオ、死にたくなければ考えろ」

「相手の最善策が常に自分の想定を超えないように動け」

「後手に回る前に先手を打て」

ブチャ!!

千切れた腕から新たな剛腕

「良い気になんなよ人種がぁぁぁ!!」

トカゲは激情に駆られ襲いかかる

「お前達は永遠に奴隷でいいんだ…」

「…黙れよ」

ドン!

「イオ、今のは同格に対しての心構えだ」

ポタ

「こういう格下には一つだけ」

「徹底的に潰せ」

ポタ

イオの前には壁にすり潰された獣人とすり潰した人間らしき何かがいた

ゴクリ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る