8話 双子ー7

ふぅー

「なんとかなったな」

「あ………」

「どうしたルイ?」

目の前には先ほどは見えていた地底が見えなくなっていた

「おま…ここに落ちたら死ぬんじゃねぇのか?」

・・・

「まぁ軽い骨折くらいで済むだろ」

ヒュー

大穴を覗くルイ

「てかよ」

壁に開いてある無数の穴

「ピッケルだけで登ってこれないだろ普通は」

……

「そうかな?」

「頑張ればルイにもできると思うぞ」

「無理無理」

「何サボってんだテメェら!!」

む…豚野郎

「じゃあ死刑と行こうか!しけ……い」

「え」

「何したこれ…」

目を開ける豚

「なんか掘ってたら地面が崩落して…死ぬ所でしたよ」

「ははは」

「いやはははじゃねぇだろ!」

「明日からの作業できねぇじゃん!」

たしかに、考えていなかった

・・・

ニヤリ

「まぁいい、今日の所は戻れ」

「明日は壁を掘る土台を作ってもらう…いいな?」

「え……」

言葉を失うルイ

「はい!喜んで!!」

「え……」

言葉を失うルイ

ガチャン

「戻ったのか2人とも!!」

老人ビタミ、太男グライアン、細男シュミテが迎えてくれた

「そんなことより作戦はどうするんだ」

「あぁ…そうじゃな」

「わしが覚えているのは地下一階に中域以上の人種を閉じ込めるここよりも少し広い部屋があるはずじゃ」

「ここは地下5階どれだけ早足で行っても30分はかかる…」

「そして1番の狙い目は就寝時間の2時間しかない、良いか行動できるのは移動時間をはぶいた40分」

「これを超すと見つかり死刑じゃ、それに腕に埋め込まれてる種別石も牢から出たら警報が鳴る」

顔が強張るビタミ

「そこでじゃ…君の腕から石を取り出し牢に帰ってきたら戻す」

「おいそれって」

ルイがビタミを遮る

「ユジィの腕を切るのか」

首を振るビタミ

「良いか種別石は他の種別石に微弱だが引き合う」

「シュミテの細い腕をつければユジィの石は引き寄せられる…ただ激しい激痛が伴う」

へぇ…そうなんだ

「伴うって…検証したのか?」

「さきほどワシの腕とシュミテの腕どちらが引き寄せるかをやってのぉ」

2人の腕が少し赤い

そうか、そこまで

「ありがとう」

「それでじゃ、ユジィの皮を切り引き寄せた石を取り出す」

「その際に使う水を用意した」

ぽちゃん

透明な容器に入った水分

「これ…どこで手に入れたんだ」

ふっ

なぜか笑みを浮かべる太男のグライアン

「俺の汗」

!!??

ぺち

「バカ者、段階を省くな」

「安心しろユジィ、これはグライアンの汗を浄化させた水…飲める水なんじゃ」

胡散臭い

「ここの地層には清石せいせきが含まれておる、この石を使うのは魔法を使えない人種だけ」

「この石を汚水に入れて3時間くらい振ると水だけじゃなく容器内部も綺麗になる代物じゃ」

「ワシが人界にいた頃に母から教えてもらった…さびれた知識じゃ」

ビタミ…あんたってやつは

ポロ


ポロ

「ありがとう…みんなも辛いのに…ありがとう」

「ユジィ、礼を言うのはまだじゃ」

「最後に皮膚を切るのはルイくん、君に任せてもいいかな」

「冒険家…剣士の君なら刃物の心得は1番だと我々は思っている」

ゴクリ

「ユジィ…任せてくれ」

ルイの目は真剣

「もちろんだよ、頼んだぞルイ」

ギッ

ビタミの手にはガラスの破片

「これも綺麗にしておいた…牢の施錠はされておらん、奴らはこの種別石に信頼を置きすぎてるようじゃ」

「あとは時を待つだけ」



ガタガタ

「これより就寝時間とする!」

ギィィィ

「よう…2人…とも」

バタン

ピットは帰ってくるなり地にふす

それほどまでにA労働は過酷なのか

「やるぞ」

広い牢屋の隅に集まる5人

「シュミテ…頼む」

ーービキ!

「う!……うぅ」

シュミテの顔が苦渋の表情を浮かべる

痛みを感じない俺としては何か皮膚が引っ張られてる感じる程度

チャプ

「では流すぞ」

タラー

ギュ

「行くぞ、食いしばれよユジィ」

ブチ

プシャ!

返り血を浴びないようグライアンはボロ切れを構える

「すまん…ユジィ、あと少しだ」

ブチブチブチ

皮膚が破れる音がする…ただ思ったより出血が少ない

切れ目が綺麗な証拠だろう

「うぐ……すまない、すまない」

切る側のルイが泣き叫ぶ

「もう少しだ」

ヒュー

カチン

「ふぐぅ!!」

シュミテの腕に張り付く石

「急ぎ布を!」

綺麗な少量の布を重ねて抑えその上からボロ布を巻き付ける…ここは演技を

「は……はぁ…ありがとうみんな」

「行ってくる」

「会えるといい…ですね」

「気張れよ」

「会ってくるんじゃ」

「絶対に戻ってこいよユジィ」

ダッ

「あぁ…戻ってくる」

ザッ!

寝ている人達を飛び越え

ギィィ

牢を飛び出す


通路を飛び出る

一面土壁の通路をひた走る

ビタミ曰く奴隷地区と呼ばれる地下の部屋は全てが施錠されておらず唯一されているのは地表と地下の境目の部屋だけ

ビタミは地下一階の部屋を探せるか不安がっていたが俺には英雄レーダーがある

今もビンビンに感じている…英雄の信号が

牢部屋と違い通路は暗い、まぁ誰も通らないから当然か…

「ふふーん、今日も痛めつけたぞ」

え……

目の前にはさっきの豚獣人

・・・

「誰だおま…」

グリィ

ドン!!

「ごふぁ!」

ドサァァァァ

「はぁ…驚かすなよ豚野郎」

英雄レーダーに気を取られすぎていた

……思わず本気で殴ってしまった

ズズズ

とりあえず知らん部屋に遺棄…よしこれでいい

走り抜け階段を一つ二つと進み

「ここか…」

地下5階とは打って変わる普通の扉

ドクン

初めての英雄との面会…面会?

この世界を守護する奴はどんな奴なんだろう…いい奴だといいな

いざ出陣

ガチャ

………

「誰だお前!!」

・・・

目の前にいるのは目をうるうるさせた子供達5人とその先頭に立つのは銀色短髪少年

「もう今日分は出したはずだぞ!?」

今日分は……出した?

なんだそのいかがわしい文章は、いやいやそう言う場合じゃなくて

英雄レーダーが指し示すのは

「聞いてんのか!短足野郎!」

たん…そく?

未来の英雄はクソガキ確定



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