背中を叩かれた

 寝ている時に背中を叩かれたことが数回あった。


 最初にこの現象に遭遇したのは数年前。当時私は、頭を西向きにして寝ていた。

仰向きで真っすぐになって寝るのが苦手なので、だいたい身体を横向き、南か北のどちらかに向けて寝ることが多かった。だから朝起きたとき、片方の肩がしばしば痛むこともあった。


 その日も南の方に向いて、横向きの姿勢で寝ていた。季節は忘れてしまった。なかなか寝付けなかったと思う。

そんな時、突然、トンッと背中を叩かれた。

 いきなりのことで、私は頭の中で「え……?」と思った。同時に鼓動も早くなっていた。ちらりと時計を見ると、丑三つ時だった。

 そのときの叩かれた強さを例えると、会社の先輩が後輩の肩にポンッと手を置き、「次も頑張れよ、応援してるぜ」という感じだろうか。力加減としては、そんな痛くなかったし普通だと思った。


 しかし、誰かが私の背中を叩くことはありえない。布団だってちゃんと被っていたから。

この現象は気のせいか?と思っても、ちゃんと叩かれた感覚がある。じゃあ、幽霊か何かに?ともやもやしながらその日は寝た。


 そして今は北向きで寝ている。俗にいう北枕である。

私は迷信を信じる方だが、別に北枕で寝ても問題はないと感じたのでそのままだった。むしろ寝やすく感じた。

あと家の仏壇の配置の関係で、西向きに足を向けて寝るのはやめておこうと思ったからだった。



 去年の秋頃のこと。一時期だけど、また頭を西向きにして寝ていたことがあった。

 その時も、身体は南か北の方に向けて、横向きで寝ていた。

私は利き手の関係で左側が上、つまり右側を下にした方が寝やすかった。なので当然、背中は北側を向くことになる。


 その日なかなか寝付けなかった。そんな中、


(そういえば……前も背中を北側に向けて寝ていた時、突然背中を叩かれたことがあったなぁ。もしかして、仏間や仏壇の方角と何か関係あんのかな)


 頭の中でこんなことを考えていた。そして、


(何となくだけど、今日もまた叩かれるかもな~。わからんけど)


 その時のことを思い出し、内心びくびくしつつ、同時にドキドキしていたと思う。

まさかなぁ……と私は思いつつも、二度あることは三度あるって言うしなぁ、なんて考えていた。

もし、そうなら――。


(私の勘が当たれば、そう時間が経たないうちに、また叩かれるかも)


 そんなことを思ってから、数分。

 トンッ。

 再び、背中を叩かれた。あの時と同じ感じ。普通の力加減。

私はやっぱりと思った。何でそう思ったのか分からない。

時刻を確認すると、やはり、丑三つ時あたりだった。


 そういうわけで、今は北枕――仏間の方を向いて寝ているので、この現象はなくなった。

しかし、何かの拍子でまた、背中を叩かれるんじゃないのか?と思うことは時々ある。

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