第2話 梅花

『大丈夫か』俺は思わず声をかけていた。

 山の社に参る足取りにこいつが鵲来さん大好きなやつだった事を思い出した。

 桃香は声をかけると怒ったように俺を見て走り去ってしまった。

 肩になにかが重くのしかかった気がした。

 独り寂しく工房へ向かった。

 こう言う時は木に向かうのがいい。

 機械を回し木から形のある作品を作り上げて行く。

 今日は良い梅の木が手に入った。

 梅の木から以前に柾さんに気に入られた棗が形造られて行く。

 梅の木は匂いがあるから茶葉に独特な匂いがつく。それはそれでひとつのマリアージュになって好む人も居るだろう。

 無心になって木に向かって一段落すると桃香の事が思い出される。

 俺は桃香がずっと好きだったのだと。

 桃香が柾さんに夢中だった時から我慢していた。彼女を応援できればそれだけで良いと。

 忍耐だけでは伝わらない。想いを形にすることが必要なのだ。

 できあがった梅の木の棗がそう言っているようだった。

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