第12話 そしてミスコンが開催される件。


 

「なーんてね。……ねえ、ちょっとドキッとしたでしょ?」




 五祝成子はにやっと笑う。

 俺は少しだけ憤慨した。からかわれていると思ったからだ。




「んな訳ないだろが」




「どうかしら?」




「ふんっ」




 俺はムッとして食事を再開した。だが箸は進むのだが味は一向にわからない。




 ……そこで少し考えてみる。

 俺は五祝成子のことをなにも知らない。……本名でさえ、たった今、知ったばかりなのだ。




 こいつには謎が多すぎる。




 俺は妖術使いと権藤が評したことを再認識させられていた。

 なぜ俺の家に家政婦として来たのかも未だわからないし、

 権藤や俺のスマホ番号を知っていることもわかってないし、

 権藤の思いをいち早く気がついて先手を打って断ったことも判明していないのだ。




「うーむ」




 俺は唸る。

 すると俺のことなぞ気にもせずに食事している五祝成子がそれに反応した。




「なに、考え込んでいるのよ。……やっぱり気になっているじゃない」




「どうだっていいだろ?」




「ふーん。そんなこと言うんだ。

 ……じゃあ、今日の部活の後、東雲さんと話した内容でも聞こうかしら?」




「ぶほっ」




 俺は思いっきり、むせかけた。

 口いっぱいにご飯をかき込んでいたところにボディブローを食らったような感覚だ。

 やはりこいつは妖術使いなのか?




「あは。……またまた図星」




「ぶほっ。……ごほごほ、……な、なにが言いたいんだ?」




「東雲さんと君の関係のことを訊きたいって言ったの」




「や、やつとはなんでもない」




 俺は憮然とした態度で答えた。




「ふーん。……じゃあ私とは?」




「う。……お前ともなんでもない」




「ふーん。そういう内容だったのね?」




 俺はそのとき悟った。




「カマかけたのか?」




「君の態度を見ていればわかるわよ。

 ……なんで遅くなったのか言わないし、なんだがよそよそしいし、簡単にわかることよ」




「どうだっていいだろ?」




 俺は少しだけ腹を立てていた。

 なんだかんだと言っても俺はこいつに振り回されているような気がしてきたからだ。




 そのときだった。




「……どうでもよくないわよ」




 いきなり顔を伏せた五祝成子が小声でそうつぶやくのが聞こえたのだ。




「……ど、どうでもよくないって?」




 するとやつは顔を上げた。




「……気になるよ。やっぱり……」




 少し潤んだ目でそうつぶやいたのだ。




「な、なにが気になるんだ?」




 俺は動揺してしまった。

 五祝成子の仕草もそうだが、それ以上に、いや反則的なまでにその憂いだ顔は美しかったのだ。




「……自分が他人にどう思われているかよ」




 五祝成子がそう言った。だが俺は見とれてしまっていたので反応が遅くなる。




「……自分が他人に?」




「君は気にならないの?」




 俺は言葉に詰まる。

 他人から自分がどう見られるか? って? そんなこと考えたこともなかった。




「……さ、さあ」




「ふーん。私は気になるよ」




「じゃ、じゃあ、なんで学校ではあんなに周りにツンケンしてるんだ?」




 俺は思いきって尋ねてみた。




「他人から自分が願った形で見られることがないのなら、

 自分から他人にこう見られたいと思った結果」




「……はあ?」




 俺は五祝成子がなにを言いたいのかわからなかった。




「す、すまん。よくわからない」




「……私、これでも小学校のときは割と誰とでも話してたの。

 女子だけじゃなくて男子ともね。でも、ある日……」




「ある日?」




「ええ、ある女の子に言われたわ。お願いだから私が好きな男の子と話をしないで、って」




「なんだそれ、ずいぶん身勝手な理由だな」




「そう思うでしょ? でも相手はわんわん泣き出したのよ。

 それも人前でね。もちろんその男の子もいたわ」




「それでどうなったんだ?」




 すると五祝成子が涙目のまま盛大にため息を吐いた。




「気まずかったわ。怒りもあったけど、それよりも恥ずかしかった。

 だって私はその男の子のことなんて、ちっとも魅力を感じていなかったのよ。

 なのに変な目で見られちゃった。……だから、私はそれから誰にでも話しかけるのを止めたのよ」




「……そうだったのか」




「そう。……あー、今思い出してもやっぱり変な気分。

 だってその男の子と話す女子って私だけじゃないのよ。

 なのになんで私だけひどい言われ方をされなきゃならなかったのかしら?」




 そう言い終えると五祝成子は涙を拭いた。




「お前がいちばんきれいだったからだろ? ……おわっ!」




 俺はあわてて口を塞いだ。

 これは俺の口から予期せずに勝手に出た言葉だった。

 まったくのイレギュラーで予定にはない言葉だったのだ。




 だが俺以上に慌てたヤツがいた。




「な、なに言ってんのよ。……バ、バカなこと言わないでっ」




 がたんと音がした。

 五祝成子が思慮もなくいきなり立ち上がったので椅子が後ろに転けたのだ。




「わ、私がきれい? そ、そんな訳ないでしょ!」




 座ったままの俺を高い視線から見下ろしながら五祝成子がそう言った。




「や、やだ。私……」




 それからの五祝成子はちょっとした見物だった。

 よろめいてテーブルに尻をぶつけたかと思うと、今度は食器棚の側面におでこをヒットさせたのだ。




「だ、大丈夫か?」




「え、……へ、平気っ!」




 そう答えると五祝成子は一目散に二階に上がってしまったのだ。




 それからの俺は部屋に戻って勉強をしたりして過ごした。

 その間、五祝成子からはなんのアクションもなかった。そして夜も進んだ頃だった。




 俺のスマホがふいに鳴った。




「……五祝成子か」




 スマホを見ると五祝成子からの着信だと表示されている。




「どうした?」




 俺は電話に出た。




『すごい星だよ』




「星?」




『うん。見てみれば』




 そこで電話は切れた。

 俺はベランダに出てみる。すると確かに見事な星空だった。雲一つない夜空が広がっていたのだ。




「ねえ、きれいでしょ?」




 すでにそこにいた五祝成子がそう言う。俺はうなずいた。




「ああ、確かに。……お前、ずっと星見てたのか?」




「そうよ。変?」




「いや別に」




 俺は五祝成子の隣に並ぶ。そしてしばらくの間、無言で夜空をながめていた。




 すると頭の中でいろいろな考えが浮かんでは消えた。

 そして尋ねたい事柄が浮かんできた。




「なあ」

「ねえ」




 俺と五祝成子が同時に話しかけていた。俺と五祝成子は見つめ合う。




「ああ、先にいいぞ」




「君が先でいいわ」




 俺たちは自然に譲り合っていた。

 なんだかおかしくて俺が笑うと五祝成子も笑顔を見せた。それはとびきり美しい笑顔だった。




「じゃあ、お言葉に甘えて先に質問させてもらうわ」




「ああ」




「もう私を追い出すつもりはないの?」




「なんの話だ?」




「いったじゃない。岩井シゲなら構わないけど、五祝成子なら家にいるのは困るって話」




「ああ、そのことか。……だって住む家が他にないんだろう?」




「うん。あの家はもう私の家じゃないし」




「なら、いいじゃないか。俺以外の人がいるときはシゲさんになればいい」




「そう。ありがと」




 俺は五祝成子の横顔を盗み見る。見とれてしまうくらいいい笑顔だった。




「はあ。……ちょっと不安だったんだ」




「なにが?」




「うん。君のこと。

 やっぱりこの家から出て行って欲しいって言うかも知れないって思ってたから」




「そんなに薄情に見えるか?」




 すると五祝成子が急に俺を見た。




「薄情とかそういう問題じゃないでしょ? ……これでも私、女なんだから」




「そうだな」




 俺は改めて思う。

 俺は五祝成子と一つ屋根の下で暮らしているのだ。世間体とかを考えるとかなりまずい。




 だが五祝成子は普段はシゲさんとして振る舞ってくれているので、

 近所やクラスのやつも気がつかないだろう。

 とりあえずそのことについては、俺は安心している。




「君がスケベな性格じゃなくて、私、安心している。でもね、私、ちゃんと憶えるから」




「なにをだ?」




 すると五祝成子は、クスッと忍び笑いをした。




「あー、忘れてるんだ? お風呂場でアクシデントがあったでしょ?」




「うっ、……ごほっ」




 俺はむせた。

 確かに俺は、二回も全裸の五祝成子をあやうく見てしまうところだったことを思い出したのだ。



「あ、あれは不可抗力だぞ」




「わかってるわよ」




 五祝成子はそう言って笑顔を見せてくれた。

 だが俺の心臓はドキドキが止まらない。




 下着を見て劣情をもよおしたなんて言ったら半殺しにされるのは間違いない。

 ここは話題を変更するのがいちばんだろう。




「で、でも、訊いていいか?」




「なに?」




「……いったい全体俺にはわからないことがあるんだ」




「なにかしら?」




 俺はひとつ咳払いをした。




「なぜ俺の家に来たんだ?」




 すると五祝成子は楽しそうな顔をした。




「言ったでしょ? 女の子には秘密が必要だって」




「なんだよ、それ。

 ……じゃあ、別の質問だ。俺や権藤のメールアドレスを知っているのはどうしてだ? 

 それと権藤がお前に告白しようとしたのを事前に知っていたのはどうしてなんだ?」




「いっぱい質問があるのね?」




「お前は謎だらけだからな」




「うふふ。褒め言葉として受け取っておくわ」




 そう答えた五祝成子はくるりと俺に背を向けると自室のガラス戸を開けた。




「おい、答えは?」




「秘密」




「なんだよ、それ」




「……そのうち、教えてあげる」




 まったくのはぐらかしだった。そしてガラス戸をぴしゃりと閉めてしまったのだ。




「……まったく」




 俺は愚痴をこぼす。そして仕方ないので部屋に戻ろうとした。




「あ、ひとつだけ良いこと教えてあげる」




 いきなりガラス戸が開けられて五祝成子が俺を見た。




「良いこと?」




「ええ。明日学校で重大発表があるわよ」




「なんだそれ?」




「今教えちゃつまらないでしょ? 

 いつか言ったでしょ? 私が情報通だってこと。明日そのことがわかるわよ」




 そして再びガラス戸が閉められた。




「な、なんなんだよ」




 俺はどうにも消化不良な感じだった。まったく五祝成子ははぐらかしの天才だ。




 見上げると星はきれいに瞬いていた。

 こんな晴れ渡った星空をながめるのなんて、本当に久しぶりな気がした。




 俺はひょっとしたら流れ星でも見えるんじゃないかと、

 夜空に目をこらしてみたが、どうにも見つからなかった。




「ま、別に願い事がある訳でもないしな」




 俺はそれから自室に戻り宿題を終わらせ寝床に着いたのであった。





 ――そして翌朝。




 俺は五祝成子との朝食を済ませ、部活に向かうのであった。

 もちろん俺は一人で家を出た。




 近所の目があるのも事実だが、部活に入っていない五祝成子が家を出るには早い時間なのが理由だ。

 やつは俺よりも一時間は遅く通学するに違いない。




 そして駅に着いたときである。




「副将、おはようございますっ」




 振り向くと東雲明香里の姿があった。無邪気さをまったく隠さないいつも通りの東雲だった。




「……お、おはよう」




「どうしたんです? なにかあったんですかっ?」




「あー。別に何でもない」




 俺は急に戸惑いを感じた。昨夕の東雲とのシーンを思い出してしまったからだ。

 だが、やつはそのことなんかまったく意に介さないようで平気のへっちゃらって顔をしている。

 ……まったく女ってやつは本当にわからん。




「副将。なにか変ですよっ。さあ、さっさと行きましょうよっ」




 そう言った東雲は俺の手を掴み改札へと進む。

 俺は急にドキリとしてしまう。

 こんな大勢の人並みの中で手を握られるなんて思ってもみなかったからだ。




「……私の気持ち。変わりませんからねっ」




 定期を改札ゲートにかざしながら、東雲がそう告げた。




「あ、ああ」




 俺はなんて答えたらいいのかわからなかったので、なんだか気の抜けた返事をしてしまった。

 そしてそれからは大した会話もないまま学校へと到着したのであった。




「また二人で登校かよ。まったく」




 俺たちが部室へ到着すると権藤があきれた顔でそう言った。




「仕方ないだろ。家が近くなんだからな」




「そうですっ。全然変じゃありませんっ」




 俺たちはそう答えながら朝練の準備をしたのであった。




 それから部活が始まった。

 朝練なので時間はあまりないことから防具をつけた稽古はしない。




 つまり道着姿で竹刀を使って軽い練習をするだけだ。

 そして朝練が終わりに近づいた頃だった。




「全員、ちょっと聞け」




 声に振り向くと顧問の岩田いわた先生がいた。

 岩田先生は五十代の社会科教師で背の低い男性だ。

 だけど剣道の腕前はなかなかで正直かなり強い。




「どうしたんですか?」




 主将の権藤が代表して先生に質問した。

 そして俺たちは自然に岩田先生の周りへと集まり始めた。




「うむ。話がある。剣道連盟から連絡が来た」




 全員がそろったのを見て岩田先生が話し始めた。

 いつもにこやかな好々爺のような先生なのだが今日はなぜか真剣な顔つきだった。




「もちろん連絡って言うのは夏の大会のことだ。いきなりの話だか全員心して聞くように」




 岩田先生の態度には有無を言わさぬ威厳があった。

 俺たちは気がつけば背筋を伸ばして先生を言葉の続きを待っていた。




「試合方式に変更があった。団体戦は今まで通り男女別になっている。

 東雲には気の毒だが我が校は女子の部は棄権させてもらう」




 先生の言葉に東雲は頷いた。その顔には別に不満はない。

 最初から女子はひとりしかいないのを承知で入部したのだから、本人も覚悟はあっただろう。




「……問題は個人戦だ。こっちには大幅な変更がある。女子の部がなくなった」




「ええっ!」




 いちばん大きな声で叫んでしまったのは俺だった。

 確かに剣道は圧倒的に男子の方が参加者は多い。




 なので女子の部は小規模で行われ、いつも男子の半分以下の時間で終了してしまう。

 だからと言って廃止は解せない。




「先生。なんとかならんのですか? だって……」




 主将の権藤が異議ありの声を上げる。

 やつの言わんとしているのは俺にもわかる。いや、剣道部全員がわかっているはずだ。




 俺はちらりと東雲を見る。

 すると東雲は呆然として立っていた。無理もない。




「東雲が気の毒です」




 俺も抗議した。だが先生の顔色は変わらない。




「お前たちが言いたいことは十分わかっているつもりだ。それに先生の話はまだ続きがある」




「続き?」




 俺は尋ねた。すると岩田先生はうむと頷いた。




「女子の部の単独開催がなくなっただけだ」




「意味わかりません」




 権藤が首を傾げる。




「個人戦は男女混合になったのだ。つまり東雲は参加できる」




「うおおっ!」




 部員全員が唸り声を上げた。無論俺もだ。




「やったな」




 俺は気がついたときには東雲の肩を叩いていた。やつも嬉しそうな顔で俺を見上げてくる。




「はいっ。良かったですっ」




「お前なら良いとこまで行けるぞ。並の男子では相手にならないんだからな」




 先生がそう東雲に告げた。東雲は涙目で頷く。




 ……後でわかったことだが、男女混合戦の話は連盟でも急に沸いた話らしい。

 岩田先生がこっそり教えてくれた話によると上の方で勝手に決めた話らしいのだ。




「……もしかしたら明香里ちゃんが剣道を始めたから男女混合になったんじゃないのか?」




 教室へ向かう途中である。権藤が東雲に話しかけた。




「なぜですか?」




 東雲はきょとんとした表情で権藤に問いかけた。俺は権藤の言わんとするのがわかった。




「天才少女が剣道でも入賞したら話題になる」




 当然だろう。

 スポーツの天才少女、東雲明香里は有名人だ。

 やつが活躍すれば教育側もマスコミも大喜びだろう。




「俺もそう思う」




「そ、そんな訳ないじゃないですかっ。私、副将に勝てなかったんですよっ」




 東雲がむきになって抗弁した。




「剣崎は個人戦で入賞している腕前だ。お前はその剣崎と互角に戦っているからな」




 権藤の言葉に俺は頷いた。




「そ、そんなぁ。プレッシャーかけないでくださいっ」




 真っ赤になって東雲は言う。

 俺はそんな東雲の表情を見ていると、かわいいやつだなと思ってしまうのであった。




 そして教室に着いた。




 教室の中はいつも通りで特に変化はない。




「おはよう」




 俺は隣の席に座る五祝成子に挨拶する。

 五祝成子とはもちろん自宅で挨拶しているのだが、それは内緒なので教室でもした訳だが、

 どうにもしっくりこない。

 だが五祝成子は全然平気なようだった。




「おはよう」




 いつも通りの返事と無表情な顔だった。

 だが俺以外のやつに言わせると話しかけてまともに返答してもらえるのが俺だけらしいのだ。

 そのことで良からぬ疑念も招いてしまうのだが……。




「おはようございます」




 気がつくと東雲明香里も挨拶をしている。

 だが五祝成子はうなずいて見せるだけだった。まったくどれだけ無愛想なんだ。




「……私、負けないっ」




 気がつくと席に座りながら健気にも東雲がそうつぶやくのが見えた。




 そしてホームルームが始まった。




「諸君、おはよう」




 勢いよく担任の須藤先生が入ってきた。

 今日はいつにもまして陽気だ。なにか良いことであったんだろうか?




 だが俺の疑問はすぐにわかることになった。

 先生がとんでもない発言をしたからだ。




「喜べ男子っ! 突然だが我が校でもミスコンテストを行うことになった」




「ええっーーーっ!」




 教室の中がどよめいた。

 もちろん俺もだ。




 先生はそんな俺たちの反応を満足そうに見回すと、

 黒板に筆圧強く『ミスコンテスト開催概要』と大きく書いた。




「我が校でいちばん素敵だと思う女性を選ぶことなる。

 ミスコン参加資格は女性であればいい。つまり生徒だけじゃなくて先生や職員でも大丈夫と言うわけだ」




 先生はそう言う。

 だが実際にお年を召した女性の先生や職員は論外だろうな、と俺は思う。




「そして投票側は男子だけではなくて女子もできる。

 つまり男性側からの一方的な意見だけじゃなくて、女子の意見も重要視される訳だ」




 クラスの中はすっかり収集がつかない状態になっていた。

 みんな我がちにとおのおのの意見を述べている。そして俺は視線が痛い。




 それはもちろん俺を見るやつが多いんじゃなくて、

 俺の両隣の五祝成子と東雲明香里がいるからに間違いない。二人とも学年を代表する美少女なのだ。




「……」




 俺はちらりと五祝成子を見た。

 するとやつは他の誰もが気がつかない。――つまり俺だけしかわからないような微妙な表情で、

 微笑しているのが見えた。




 ……そういうことか。俺は納得した。

 昨夜、やつがベランダで言っていた重大発表とはこのことだったのだろう。



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