第3話 兄妹揃って隣町へ
隣町とも路面列車は繋がっている。幸いにも今日は車内はかなり空いていたので、スノーヴィクとリリカは1番後ろの座席に座った。
やがて道は大きく開き、枝分かれしたしたところで路面列車は左折。いよいよ隣町に入ったようだ。
リリカは呟く。
「確か、ここは小麦が不足していると、昨夜自分の部屋で調べたわ」
スノーヴィクは頷く。
「だから、小麦を扱う品物は高く売られてるんだな」
2人は蒸気機関車に乗り継ぎ、寝台列車でそんな会話から始めた。
列車は鉱山の中のトンネルに入った。何やら汗だくになりながら作業をしている男たちが何人か、2人の窓から見える。
トンネルを抜けると、陽光をたっぷりと浴びて輝く、淡い色合いの花びらが特徴的な花時計が表れた。
「きれいなお花ね」
スノーヴィクはリリカの声から発せられた感情は、もう何百回と見た同じ景色を見ての感想で、その感動はヒューマノイドとして返却される度にリセットされるものなのだろうと考えていた。
「ミセス・ロンダの料理教室だってさ。行ってみるか?」
「そういうのはヒューマノイドが行って良いところではないから、遠慮しとこうかな」
「そうか、それもそうか」
「誘ってくれてありがとう。そろそろ到着するわね。着替えなきゃ」
「僕も着替える」
下着姿だった2人は外着に着替えた。
ロビーでリリカにオレンジジュースをすすめたが、ヒューマノイドは飲み物は飲まないものだと断られてしまった。
「さっきの料理教室の話、旅のプログラムに組み込んであったなら、ごめんなさい」
「いや、組み込んでないから気にしないで。謝る必要もないんだ」
「そうなのね。さぁ、降りる準備をしましょう」
「そうだな」
2人は寝台列車に戻ると、必要な荷物を持って駅で降りる。駅のホームはかなり混雑していた。
ヒューマノイドと上級少年の夢幻旅行 色咲鈴子(しきさき・りんこ) @peeepop202212
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