第2話 祖母の誕生日会の後の夜にて

「そのゴーグル似合っているね。センスが良いね」

「ありがとう」

 スノーヴィクとリリカは路面列車に乗って先を急ぐ。

 今日はスノーヴィクの祖母の誕生日で、サプライズに何が良いか街へ出て考えていたのだ。

 そんな時、ふとショーウィンドウに光の反射で映るリリカの帽子に巻かれている、鋼のゴーグルを見て、スノーヴィクがぽつりと言ったのである。

 2人はショーウィンドウの向こうの、老婦人用ステッキを見る。

 祖母・フィアーナにはステッキはあっても、老朽化が激しくなってきていたので、2人は小遣いを出し合って、新しい赤いステッキを1本買った。勿論、きちんとラッピングはされている。

 ラッピングはオプションで、プラス100ウェルかかったが、これはスノーヴィクが出した。


 その日のサプライズは成功した。


 フィアーナは古いステッキを捨てて、新しいステッキで近所の教会に来た。リリカが座る、パープオルガンの前の椅子の横に来た。

 その目はらんらんと輝いている。

 伴奏はリリカが担当し、スノーヴィクといっしょに賛美歌を1曲歌ってみせた。

 外は秋めいていた。



 その日の夜、スノーヴィクとリリカはスノーヴィクの部屋で秘密の会議をする。

「僕はリリカに色々な世界を見せたいし、旅がしたい。良かったらすべての計画書に目を通して、どこに1番行きたいか、どこから行きたいかを教えてくれないか?」

 スノーヴィクはベッド脇のランプの明かりに顔の右側をほんのり照らされながら、リリカの光る瞳を見つめながら聞く。

「若しくは意見や要望があれば聞くよ」

 リリカは5種の旅行雑誌と5枚の計画書をじっくりと読む。

 旅行雑誌には絶景スポットの写真が多く載っていた。

 読みながら、リリカは申し訳なさそうに眉根を下げる。

「でも、良いんでしょうか? 折角、家事を覚えた私までが旅に出てしまって。奥様に怒られてしまいそうで」

「それは心配要らない。話はもうつけてある。あとはリリカ次第だ」

「なら安心♪ 隣町から始めたい」

 リリカの表情が華やいだ。

「よし、隣町だね。計画は明日の朝から始まるよ。今夜はもう旅の準備を済ませたら寝よう」

「おやすみなさい、スノーヴィク」

「おやすみ、リリカ」

 リリカは小さく頷いてスノーヴィクの部屋を出て、自分の部屋へ戻った。

 

 

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