ヒューマノイドと上級少年の夢幻旅行

色咲鈴子(しきさき・りんこ)

第1話 出会いは突然に

 空がまだ青い頃、銀髪の青年スノーヴィクは今日もいつも通り、当たりくじが必ず3枚出るクジ屋とその客たちで賑わう広場の前を通り過ぎていった。

 スノーヴィク=エスパミョンはクジはインチキだと考えているため、興味も持たない。

 大通りを渡った先の花時計の前で、待ち合わせていた母親・フレア=エスパミョンと合流する。

 路面列車を乗り継ぎ、2時間乗ったとこで、林の前の大きな店の前で列車を降りるフレアとスノーヴィク。

 林の前に建つ三角屋根の店の看板には、エトセトラという店名が、白地に赤いペンキで書かれてある。

 店内に入ると、出入り口のドアからカランコロンと、来客を歓迎するように木製ベルが鳴った。

 店内は迷路のように、所狭しとカラフルな髪色のヒューマノイドが並んでいる。

 スノーヴィクは少女ヒューマノイドのコーナーへ向かった。後からフレアもついてくる。


 結局、母親好みの可愛いヒューマノイドに決まった。

「いらっしゃい。その娘で良いんだね? 6,000縁で貸し出すわよ」

 初回と月々のヒューマノイド代は母親のフレアが持つことになっている。※そのうちの三分の一はヒューマノイドの小遣いになる。

「まいどあり〜♪」

 借りてすぐ店を出てから、フレアとスノーヴィクは協力し合ってヒューマノイドを起動させた。

 ヒューマノイドはすぐに目を覚まし、自力で立ち上がる。

 両サイドに並ぶフレアとスノーヴィクを振り向くと、たちまち美少女らしい笑みで声をかけてきた。

「あなたがたが私のあたらしい家族?」

 フレアが頷いた。

「えぇ、そうよ。私はフレア=エスパミョン。そっちに居るのが息子でありあなたの兄にあたるスノーヴィク=エスパミョンよ。 あなたの名前は…………そうね、リリカにしましょうか。良いわよね、スノーヴィク?」

 スモーヴィクが持っている重たい荷物の中にはリリカのドレスが入っている。

「あぁ、勿論さ」

「じゃあ、リリカ、これから宜しくね。スノーヴィクもあいさつなさい」

「宜しく、リリカ」

 その後三人は再び路面列車に乗って帰った。

 帰宅してすぐ、リリカはフレアから調理の仕方を教わる。その他家事全般を教え込まれた。

 リリカは教わったことをすぐに吸収して自分のものにした。

 残りすべての家事を終えたリリカに、スノーヴィクは声をかける。

「明日の学校帰りは迎えに来てくれるんだろう? 美味うまいアップルパイ屋があるんだ。テイクアウトしてかないか?」

 せっかくできた可愛い妹に声をかけずにはいられなかったのだ。

「かしこまりました」

「僕たちはもう兄妹だ。二人きりのときは敬語はナシな。改めて、これから宜しく」

 母親のフレアは先に寝室で寝てしまったらしい。

「宜しく、え〜と…………?」

「僕の名はスノーヴィク」

「こちらこそ改めて宜しく、スノーヴィク」 

 

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