第29話 序盤に出てくるFOE
「どらららららららぁぁーーーー!!」
「ゴブギャーーー!!」
前方にダッシュしながらの移動射撃で、ゴブリンたちを殲滅。
「GIYAA!!」
「ぜりゃぁぁーーーー!」
「GIYO!?」
十字路で待ち受けていたゴーレムの振り下ろしは、勢いつけたままスライディングで回避して。
「脇腹がガラ空きだぜ?」
パンパンパンッ!
「GOGYO!」
きっちり装甲が薄いところを狙い撃ちして、手短に仕留める。
「なんて鮮やかな精霊殻捌きだ。俺たち機動歩兵並み、いや、それ以上に動き回っているんじゃないか?」
「それよりあの正確な空間把握能力がとんでもないって、空に目があるんじゃないかってくらいの精度だよアレ……ほらまた1体仕留めたっ!」
状況に合わせて的確に。
先行入力とキャンセル再入力を使い分ける。
(無駄玉は打たない。1体でも多く、この手でぶちのめす)
気をつけるべきは、討ち漏らし。
背中を預ける仲間はいる。それでも、1体たりとも逃がさない。
「ドッグ2、こちらコントロール・ズー。独断専行が――」
「1体逃せば明日の人類が20人殺される」
「――っ!?」
万に一つも、エターナルマイディア黒川めばえに繋がりそうな危機を、俺の手からは零さない!
「こちらドッグ1! ドッグ2! 好きにやれ! このボクが後詰だ!」
「!」
ありがたいことに。
今の俺には天下の御三家様がついている。
「こちらバード2。バード3と合流成功。そこにはもう、キミしかいないよ!」
「同じくバード1。見せてもらうぞ“緑の風”!」
さらにありがたいことに。
舞台は整っているらしい。
なら。
「了解。ハーベストは殲滅だ!」
『超過駆動ON。機体負荷の一部をパイロットの体力・気力で補います』
お望み通り、大暴れだ!
・
・
・
「撤退などさせるものかっ!」
「ピィィィィッ!!!」
背中を向けて逃げていたフェアリーを、容赦なく撃ち抜いて。
「ふぅー……」
『周囲に敵影なし。ですが浸食値が不安定です。マーキングを見つけ次第破壊してください』
ひとまずは、殲滅完了。
ゴーレムは合計8体。こまごました奴らを足して25体。
(めばえ……)
またひとつ、推しとの未来への距離を縮めたぁ……。
「どんまいエース。“
「こら、茶化すな駆。いや、バード2! ……とはいえ、圧倒的な戦果だ」
「あ、あの! ありがとね! 助けてくれて!」
戦況が落ち着いて、次々と通信が入ってくる。
ゆっくり残心決めてるところだから、特に返事はしない。
「黒木、いや、ドッグ2。こちらドッグ1。これからマーキングを探す。こんな急な出現だ。通常浸食ではなく必ずマーキングがあるはずだからな」
「こちらコントロール・ズー。ドッグ1はそのまま探索を。バード1からバード3、皆さんもドッグ1に随伴しマーキングを探してください……そして、ドッグ2」
続く佐々君の通信を聞き流していると、六牧司令からお声がかかる。
「キミはその場で待機。帰還後、司令室に来るように」
「了解」
「……必ず、だからね?」
静かに言い放たれたその言葉は。
独断専行を咎めるための呼び出しではないことを、ハッキリと告げていた。
「……なるほど」
『? ドウシマシタカ?』
「あれ、ヤタロウは?」
『変ワッテ頂キマシタ。ソレデ、何カ疑問デモ?』
勝手に出てきたヨシノに疑問符を打たれて。
俺は、ちょうどいいやとこっそり回線に施錠して、浮かんだ考えを口にした。
「今回の件。俺の実力を測るってのが主目的だったんだなってな。
『ナルホド』
「緑の風って呼ばれだしてる時点で予想はしてたが、完全にマークされてるっぽいな」
『ソレハ大変デスネ』
「そう、大変」
大変なだけで、特に問題はない。
そして、俺の実績ベースで実力を測るってんなら……。
「……あまりにも、歯応えがない」
『?』
そんな、俺の呟きに。
まさに図ったかのようなタイミングで、その声が響いた。
「こちらドッグ1! マーキングを発見した! だがこのマーキングは……ただのマーキングじゃない!」
『! 終夜、巨大ナ敵ガ、来マス!』
佐々君からの緊急連絡に、ヨシノの緊迫した声が重なる。
「これは、これは“サークル”だ! 幽世の門から大物が、来るぞ!!」
『タイプ照合……精霊級、イフリート!!』
直後。
「オオオオオォォォォーーーーーーーーーーーー!!!!」
静寂を取り戻したはずの港町に。
再び戦火を呼び起こす、真っ赤なハーベストの雄叫びが響き渡った。
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