もふもふたちとの出会い
繁茂する木々の間を、
ぼくは、それについていくのかやっとだった。
やがて、土の地面が丘の様に大きく盛り上がっている場所までやってくる。
その丘の麓部分には、人ひとりが入れるほどの穴が穿たれていた。
(……だいじょうぶかな?)
ぼくは、警戒しつつ、ひとりと一匹のあとに続いた。
穴の通路は天井が低く、少し屈んで進まないと頭をぶつけてしまいそうだ。
長さもそれほどではなく、五、六メートルもいくと突き当たりへと到達した。
そこは少しだけ広い空間となっており、もう一匹、別の
最初の一匹よりも、ちょっと身体は小さい。
地べたに横たわっており、呼吸がやや荒かった。
どうやら、衰弱している様子である。
その原因についても一目瞭然であった。
寝そべる
「あうぅ」
リーファが心配そうな顔でぼくを振り向く。
ぼくは頷いてから、衰弱する
矢は、かなり深く刺さっているようだ。傷口の周辺の毛が赤黒く染まっており、地面には乾いた血溜まりができている。
これを引き抜くのは危険だ。臓器や神経などを傷つけてしまうおそれがある。
けど、もちろん、このままにはしておけない。
「ワールドイズマイン」
眼の前から、
たしか
人々がまた森へと深く入ってくる様になれば、こういった事も起きてしまうか……。
あるいは、ゴブリンに撃たれた可能性もなくはない。連中の中には、弓を使うヤツもいたから。
ぼくは、矢を拾い上げる。
「ワールドイズノットマイン」
自らの身体に異変を察知したらしく、
「リーファ」
「あうッ」
彼女は、即座にこちらの意図を理解してくれたようだ。
背負っていたリュックを地面に下ろすと、中から小瓶をひとつ取り出す。回復薬である。
それを受け取ったぼくは、開封して薬液を
やがて、
「あ、ムリはしない方がいいよ」
こちらの心配はよそに、
こちらをじーっと見つめてきて、徐ろに、ぼくの肩や背中に頭を擦り付けてきた。
(やば……か、かわいい)
ぼくは恐るおそる、もふもふの白い背中をなでなでする。
ひとしきり、もふもふを堪能させてもらう。
「ガルゥ、ガルルウゥ」
「がうがう、がう、がうがう」
しばし会話を交わしていたらしいリーファと
「な、何?」
戸惑うぼくに、リーファが言う。
「おれい」
「え、ぼくに?」
「いや、いいよ。そんなの」
別に見返りを求めていた訳ではない。それに狼の魔獣からのお礼と言われても、具体的に何も思いつかなかった。
けど、
ぼくらをここへ案内した、最初の一匹もそれに加わる。
つぶらな六つの瞳はずるいよ。
「わかった。けど、すぐには思い浮かばないから、次の機会までに考えておくよ」
ぼくらは、穴の外へと出てきた。それと、ほぼ同時のことである。
バサバサッ。
頭上で鳥のものらしき羽音がした。
顔を上へ向けると、枝葉のすき間に黒い鳥影が見えた。こちらへ猛スピードで降下してくる。
明らかに、まっすぐぼくへ向かってきている。けど、攻撃をし掛けてくる様な雰囲気は皆無だ。
鳥はぼくの右腕の上に止まった。
「クックー」
グレーっぽい羽色に赤い斑模様。
今日は、やたらもふもふに縁があるな。
よく見ると、鳥の脚から紐が伸びており小さな木筒がぶら下がっている。
伝令鳥?
ぼくは、筒を開封して中を確認する。一枚の手紙が封入されていた。
取り出してみる。差出人欄にはこうあった。
『アリッサ・バラードより』
な、何で、ぼくの居場所がわかったんだ?
まあ、有能な鑑定士である彼女のことだから、何らかのスキルでこちらの現在地を把握できたのかもしれない。
別に、彼女にであれば、こちらの所在地を知られていても問題はない。
手紙を一読したぼくは、しばらくその場を動けずにいた。
その内容は、ぼくに衝撃をもたらすに十分なものだった。
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