7.アマミーアマホク(3)
「あだだだだだ…」
ただカフェの椅子を並べただけの上に仰向けになっていたのが、跳ね起きれば落ちるに決まってる。
「なぁにやってんだよ! しっかりしろよ、ほら〜」
手を貸してくれたシノさんとホクトに支えられて、俺は椅子に座り直した。
「南の
「してねェよ。俺を口説きに来てるだけだよ」
「は?」
「だーから。アマミーは俺の焼いたキッシュを食って、この味ならカフェでも出せるし、自分も時々食べたいから、中古レコードなんか売るのやめてココでカフェをやりなって勧めてきたんじゃよ。でも俺は自分がレコードのコレクションするのに、中古ショップやってるほーが都合がイイから、やめるのはヤダつったんさ。そしたらアマミーが、中古屋はネット販売やって、店舗の端っちょに残すだけで充分で、カフェスペースをメインにした
「じゃあシノさん! その、ミナミってヤツと浮気したのっ!」
「ンなこたぁしてねェつーの、しつけェなぁ! だいたい俺は最初に
「ちょ、ちょっと待ってください。えっとオーナーさんは…」
「オーナーは俺! 名前は東雲柊一! こっちは社員のヘタレン! 覚えた?」
「え、ちょっと!」
ぞんざいな紹介に苦情を挟もうとしたが、ホクトは俺の存在に興味が無かったらしく、スルーされた。
「あ、はい、了解です。じゃあ現状を簡単にまとめると、東雲さんのお店に南が勝手に出資している…ってことですか?」
「出資つっても、今ンとこ出してもらったのは改装費用だけじゃよ。そんでアマミーには出資者特別待遇で、キッシュの取り置きしてる」
「キッシュの取り置き? あの、偏食どころか冷食のグラタンしか食べない南がキッシュを?」
「俺のアマミー・スペシャルなら食うよ」
「ああっ! それってもしかして、いつも真っ黄色なの一台だけ焼いてるやつ!?」
「だってほうれん草入れちゃダメだってゆーんだもん。だからアマミースペシャルは、スイートコーンとマカロニ入れてんだ。玉ねぎちょっぴり、チーズと生クリーム増量。ベーコン無しでシャウエッセン一本に、トッピングはゆで玉子」
「なにその具材、キッシュじゃなくてグラタンじゃないの…」
「ああ、それは確かに南だ…」
そこで納得しちゃうのはどうなんだろう? と思うが、しかしわざわざキッシュの中身をグラタンにしてまで取り置きをするような偏食なんて、そうそう存在するワケも無いだろうから、そういう台詞になるのは致し
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