第40話自殺未遂

タカシは静養期間を経て、市役所勤務を再開した。

周りは喜んで、久々の顔に安心したようだ。

椛山さんを始め、周囲の職員にもお詫びを言って回った。

薬の量が半端ないので、周りは相当タカシは酷い精神病なのだと知った。

洋介も2歳になり、全ては順調に進んだ。

タカシが30歳の春、体調を崩し市役所を休んだ。

めぐみは洋介を保育園に送り、そのまま出勤した。

タカシは、苦しかった。

生きる気力を失った。

目の前には、200錠の睡眠薬がある。

手紙をめぐみ宛に書いて、睡眠薬を全て飲んだ。250錠ほど。精神安定剤も。

そして、最後のタバコを吸ってベッドに横になった。

直ぐにタカシは眠りについた。睡眠薬自殺を図ったのだ。


気付くと、天井が真っ白だった。

タカシはここは天国か?と一瞬思った。よく見ると、両腕に点滴が繋がれ、胸には色んな配線が繋がっていた。

目を覚ました看護師がタカシに気付いた。

「杉岡さん、起きました」

と言って看護師とめぐみが近寄った。

3日間昏睡状態だったらしい。

めぐみは至って冷静であった。

その日の、夕方はめぐみの運転で帰宅した。

「タカシ君、私もう付いていけない」

「ゴメン」

「市役所辞めたら?」

「お金はどうするの?」

「多分、タカシ君なら障害年金がもらえるよ」

「障害年金かぁ〜」

福祉課の人間だから、その制度は知っている。

「分かった。辞める」

「ボチボチ、内職でもするよ」

「タカシ君。命は軽いモノじゃないんだから、二度とあんな事しないでよ」

「分かった。ゴメン」

この辺りから、夫婦関係にヒビが入る。

そして、市役所を退職したタカシはめぐみの両親に嫌われた。それは、ずっと前からだが、朝めぐみが忙しく出勤準備していても、タカシは寝たままだった。

その生活は16年続く。

40歳を超えたタカシは、内職やA型施設で働き、給料と障害年金を全額めぐみに渡した。

40万にはなる。

そして、その生活もそろそろ終わりが近付いてきた。

タカシ、44歳の冬の出来事であった。

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