第38話嫌われる
休職中、タカシはずっと寝ていた。精神安定剤がキツく眠たくなるのだ。
めぐみは幼い洋介の面倒をみながらタカシにも何かと力添えした。
ある日の日曜日、めぐみは実家に孫の顔を見せようと、家族3人で向かった。
リビングに入ると、めぐみの父親が新聞を読んでいた。
タカシが、
「お久しぶりです」
と、挨拶したが無視された。母親も何か普段と違う。どうしたのだろうとタカシは思った。そして、お義父さんが言う。
「タカシ君。君は市役所を休職しているらしいね。精神病だろ?いつ、復帰できるのか?」
「1年後です」
「うちは、精神病患者に娘を嫁がせた訳では無い。ブクブク太って、ちょっと自己管理が甘いんじゃないのか?二度と顔を見せないでくれ。今日は帰ってくれ」
と、めちゃくちゃな事を言う。
「ちょっと、お父さんそんな言い方ないでしょ!過労で病気になったのよ!それに、この体重増加は薬の副作用なの。いいわ、二度と実家に戻らないから」
「めぐみ、係長を降ろされた旦那を庇うなよ!」
「は?どこから、情報を得たの?降ろされたんじゃ無くて、自ら降りたのよ!こっちが、お義父さん達の顔なんて見たくもない。タカシ君、洋介、帰りましょ」
タカシ一家は実家を後にした。
帰りの車の中で、タカシは沈んでいた。
「ゴメンネ、タカシ君。私、親と縁切るから」
「いや、良いんだ。全ては僕が悪いんだから」
「悪い事無いよ!精神病って、真面目な人こそかかる病気だから」
「ありがとう」
洋介はチャイルドシートで寝ている。
3人で定食屋に行く。洋介には、めぐみの分のご飯とおかずを食べさせた。
タカシは刺し身定食。でも、刺し身と味噌汁、お新香しか食べ切れず、ご飯には手を付けず洋介に食べさせた分少なくなっためぐみに渡した。
タカシは絶望していた。
治る事の無い、精神病。
障害等級は2級が下りた。
タカシの両親は、医療系の仕事なので今日、めぐみの実家で言われた事をタカシは電話した。
両親は烈火のごとく怒り狂った。
父親は、早速めぐみの実家に電話した。
苦しんでる息子を悩ませるヤツは許さない。
父親は感情に任せて、向こうの父親を批判した。向こうは、恐怖に慄いた。
親も縁を切ると言う。
そして、タカシの母親が言う。
「私がタカシの体と変えてやりたい。手術して治る病気の方がよっぽど楽だよね。タカシ、今は何にも考えないで。お父さんとお母さんはあなたの味方だから」
タカシは涙目になった。
その後、最初の1ヶ月は眠っていたが散歩をするようになった。よちよち歩きの洋介と近所の公園まで。
めぐみは、タカシの姿を見て自分が今は家族を支えなくちゃと決心した。
タカシ、29歳の初夏の話しである。
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