第37話醜い体型

タカシは2週間の静養を終えて、職場に復帰した。

椛山課長が全員に係長の仕事を分配し、また、自らも自分仕事をしながら、タカシの仕事を代行で行っていた。

体重が10㎏も増えていた。それは、精神安定剤の副作用なのだが、課長しか知らない情報で周りの職員は胃潰瘍で休んだ割には太っていると不思議がっていた。

タカシは周りの雰囲気に気付いていた。

腹は出て、顔は腫れぼったい。醜い体型になってしまった。

業務に就いても、精神安定剤の副作用で1日中眠たいし、疲労感がある。

食欲は無い。

ある日、1日だけの休みを取り、大学病院の精神科を受診した。

それは、夜になると金縛りに遭い、女の子がベッドを走り回ったり、知らない人の声が聞こえたりするからだ。

検査の結果、とんでもない病気が発覚した。


統合失調症


昔は精神分裂病と言われていた病気だ。医師からは、相当きつい薬と時間がかかると説明を受けた。

だが、めぐみも洋介も食べさせていかなくてはならない。

仕事を辞めるは愚か、休む事も出来ない。

医師は1年間の静養を言い渡したが、聞く耳をもたなかった。

帰宅すると、洋介は昼寝していてめぐみはテレビを見ていた。

「タカシ君、病院どうだった?」

「自律神経失調症がちょっと酷いだけ。明日からまた出勤するよ」

「じゃ、今夜はお寿司にしようか?」

「何で?」

「タカシ君が元気になれるように。朝、スーパーでビール6本買ってきたよ」

「ありがとう。夕方までちょっと寝る」

「分かった」

タカシはショックと不安で、寝込んでしまった。

夜、家族3人で食事をしていると、

「タカシ君。私見たの。薬の名前」

「それがどうした?」

「もしかして、うつ病?」

「いや、自律神経失調症だよ」 

「ねぇ、正直に言って!」

「……統合失調症」

めぐみは暫く黙り、

「精神分裂病って事だよね」

「うん」

「仕事、続けられるの?」

「明日、課長と相談する。兎に角、だるいんだ。夜中に幻覚と幻聴に悩まされているんだ」

めぐみは涙目になった。

「僕は係長を……降りる」

「……大丈夫?」

「うん」

「ほんとに?」

「うん」

それから、2人はネットで統合失調症を検索した。

最悪の病気だった。不安がるタカシをめぐみは献身的に支えた。

翌朝、課長に一連の話しをして係長から降りる事になった。

代わりは、タカシより3年後輩の女の子が係長に抜てきされた。

タカシは、また慣れた障がい者福祉の業務に就いて、自らも障がい者手帳の申請をした。

勤務出来る状態は長くは続かなかった。

1年後、課長に退職願いを申し出たが、課長は1年間の静養を言い渡した。

周りはとっくに、タカシが精神病であることに気付いていたので、優しかった。

人望があったのだ。

ここからが、タカシの地獄は始まる。

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