第36話病名を隠す

タカシは自律神経失調症で2週間の静養を余儀なくされた。

たまたま、孫の顔を見にめぐみの両親が着て、タカシが部屋にいると、仕事はどうしたのか?と、めぐみに尋ねた。

タカシは首を軽く縦に振る。

「タカシ君、胃潰瘍で2週間静養なの」

と、言うと義父は、

「貴志君、役所はストレスが溜まるだろうから、この機にゆっくり休みなさい」

と、言った。タカシは、はい。と返事して自室に戻った。

口が避けても、自律神経失調症とは言えない。

精神病であることがバレたら、義父の気性だ。離婚を口にするかも知れない。

病名は隠す事にしている。

また、市役所もかん口令がしかれ、職員の病名は言ってはいけない。


めぐみの両親は、また来るね。と、言って帰って行った。

タカシは自室が出て来て、

「いつまで、オレが精神病に苦しんでるか隠し通せるかな?」

めぐみは皿を洗いながら、

「だって、自律神経失調症でしょ?直ぐに良くなるよ。うつ病じゃないんだから」

「うつ病だったら、どうするつもり?」

「私はタカシ君の味方。私が守ってあげる」

「ちょっと、飲みたいな。缶ビール」

めぐみはテーブルに缶ビールを置いた。

授乳中はビールが飲めない。

だから、タカシだけ飲んだ。ツマミは、キムチ。

洋介は、ずっと寝ている。赤ちゃんは、寝て育つのだ。

「ねぇ~、タカシ君。最近、少し太った?」

タカシはお腹を触った。

「精神安定剤は、太るみたいだよ」

「ずっとカッコいいパパでいてね」 

「豚になったら?」

「それでも、好きだよ」

この時期は、まだ、精神疾患の恐ろしさを理解してはいない2人だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る