第34話いよいよ出産

翌日の昼にめぐみは、分娩室に入った。タカシも立ち会うが、暫くしてから上から分娩室用の上着を渡されそれを着て、立ち会った。

めぐみは、深呼吸しながら力んでいる。

ラマーズ法ではない。

タカシは、分娩室が珍しくてキョロキョロしていた。

手を握るにも、握り棒に掴んだめぐみの手に手を乗せても邪魔だろうし、頑張ってるのに頑張れ!とは、言えない。

看護師が、頭が見えて来ましたよ〜。と、言うとあっという間に生まれた。

男の子だ。

それは、エコーで知っていた。


生まれた自分の子供を見て、振り返るとめぐみの下半身が見えた。

内臓らしきものが飛び出て、血だらけ。

それを見たタカシは目眩を感じて、ロビーのソファーにぶっ倒れた。

それからめぐみは、1週間病院で過ごした。

最終日の夜にフランス料理が出た。

準備する看護師さんに、タカシは、

「看護師さん、1人分少ないですよ」 

と、言うと、

「これは頑張ったママさんの分だけですよ」

「じゃ、ワインはオレが飲みます」 

「パパさん。ここは病院です。病院がお酒出す訳無いでしょう」

と、叱られた。めぐみは、笑っていた。

その晩は、タカシは帰宅してビールを飲んだ。

パパになった嬉しさ、責任感を抱きその晩は睡眠薬を飲んでも眠られなかった。

翌朝、めぐみと子供を連れて帰った。

幸せだった。

タカシは月曜日から、仕事を始めた。めぐみは産休だ。

子供の名前は洋介にした。

字画が吉だったからだ。

こうして、貴志、めぐみ、洋介の生活が始まった。

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