第28話気になる彼氏

大川めぐみは大型パチンコ店の店員だ。

高校卒業後に就職して、4年目になる。今はカウンターの特殊景品の受け渡しが主な仕事。

同僚の貴子と昼休憩中に話した。

「めぐみの彼氏って、市役所職員なんだってね?」

と、貴子はサンドウィッチを紅茶で流し込む様に食べていた。

めぐみは、手作りのお弁当を食べながら、

「彼氏はここの常連さんなの。てっきり、普通の会社員だと思ってたら、まさかの市役所職員で係長なの」

とめぐみはにこやかに話した。

「めぐみはこのパチンコ屋の一番の出世頭だよ」

「でもね、彼、ちょっと暗いところあるの」

「何で、何で?」

「前の彼女さん、結婚前になった時に病気で亡くなったらしの」

貴子は黙り込んだ。

「だから、女性恐怖症みたいなところがあって、私より5歳年上なんだけど、心配になる時があるの」

貴子は

「それは、そうなるよ。彼氏さん辛い経験をしたんだね」

「うん」

「そろそろ、カウンターに行かなきゃ、めぐみ」

「うん。行こっか」

2人はまた、ホールへ戻った。

めぐみと貴子は17時に仕事を終えて、更衣室で着替えて、貴子がめぐみを飲みに誘った。

貴子はめぐみより3歳年上のお姉さん。美しい顔立ちだが、彼氏はいない。同性愛者なのだ。いわゆるレズビアン。

だが、貴子はそんな目でめぐみを見ていない。

彼氏はいないが彼女がいるからだ。パートナーはまだ、大学生。


チェーン店の居酒屋で2人は、コーン茶割りを注文した。

コーン茶割りで乾杯して、明日は土曜日でタカシ君は休みだから、ここに彼氏を呼べば?と貴子が言うのでLINEを送ったが返信が一向にこない。珍しい。

立て続けに3回ほど送ったが既読が付かない。

めぐみは諦めて、貴子と酒を楽しんだ。

焼き鳥チェーン店なので、焼き鳥を食べだす2人。

めぐみが割り箸で串から鶏肉を外した。

それを見た貴子は、

「めぐみちゃん。焼き鳥は串から外すのはルール違反だよ。こうやって、口でうまく外しながら食べなきゃ、職人さんはわざわざ串で焼かないの。フライパンで焼くのと同じたってね。これは、お父さんが教えてくれたの」

めぐみはハッとした。そう言えば、タカシ君も同じ事を言っていた。

そして、ネギマの語源は「ねぎまぐろ」の事だとも。

「貴子ちゃん、いつもタカシ君に言われてた。以後気を付けます」

それを、にこやかに聞いた貴子は酒を飲んだ。

23時。

2人は家路についた。

あれから気になり、LINEの既読が付かないので、更にLINEを送った。合計7回も。

でも、返信が無いのでベッドに倒れ込む様に寝転んだ。

化粧も落とさずに。

その頃、タカシは薄汚い路地で、嘔吐している最中だった。

朝、起きると既読が付いていた。そして、

『寝てた!』

と書いてある。

タカシに、

「タカシ君、明日、どこかに行きませんか?」

と、送ると直ぐに返事が来た。

「いいよ」

と。

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