第25話新しい彼女
タカシは27歳になっていた。今の役職は福祉課の主幹。
保健所と市役所が統一されて、保健センターと呼ばれる様になったが、以前の福祉課と内容は変わりはないが、仕事量が……。
保健センターになってから、抱える仕事も多くなりタカシは多忙を極めた。
かなことの同棲は、思い出になった。
命日は、2回ほど墓参りに行ったが今年はもう行くことを辞めた。
それは、新しい人生を歩むため、かなこの事を忘れたいと言う思いからだ。
3年間、彼女らしい彼女はいなかった。
女に興味が無くなったのだ。
しかし、1人の女性が最近気になる。
気晴らしにパチンコ屋に行くのだが、景品カウンターの女の子だ。
ネームには、大川めぐみと書いてある。たまに話す。
「今日、お座り一発だったよ。500円で7連したから、勝ち逃げするよ」
と、タカシが言うと、
「それは、ラッキーでしたね」
と話す程度。
しかし、ある日、保健センターに福祉乗車券の受取に、付き添いでめぐみが現れたのだ。
妹が知的障害で、その援助をしていたのだ。
「あっ、お兄さん。こんにちは。お兄さんは市役所職員だったんですね」
と、めぐみが言うとタカシはバツが悪そうに、
「どうも。あんまり、パチンコ打ってる事は良くないんだ。市外のパチ屋にみんな行くが常識だけど、あの店には愛着があってね」
「そうなんですね」
その後、ちょくちょく、めぐみは付き添いで保健センターに現れた。
ある日、めぐみからそっとメモ書きを渡された。
電話番号が書いてあった。
タカシは迷った。また、悲しい思いをするのではないか?と。
1週間後、タカシはめぐみに電話した。
そこから、友達登録してLINEでのやり取りをした。
めぐみは美しい、黒髪の女性だった。儚げで色っぽい。
LINEのやり取りをしてから、休日食事に行ったり、飲みに行ったりし始めた。
だが、タカシは彼女にしようとは思わなかった。
だって、別れるのが辛いから。
過去の恋愛の話しになった。
かなことの死別の話しをすると、めぐみは涙を浮かべた。
そして、タカシに抱きついた。
「私、杉岡さんをツラい目に絶対に遭わせない。だから、私を信じて!」
タカシはちゅうちょしたが、
「ずっと側にいてくれる?」
「うん」
「じゃ、君を信じるよ。よろしくね。めぐみちゃん」
めぐみは、
「よろしくお願いします。杉岡さん」
タカシは自分より5歳下の彼女を作った。
プラトニックな恋愛を1年続けた。その1年で2人の性格を知り尽くし、コアな関係になっていく。
ベッドの上で、タカシはトランクスを履くと、タバコを吸い始めた。
めぐみはタバコの煙には慣れていた。そう、16歳からタバコを吸い始めて、20歳で辞めたのだったからだ。
(未成年者はタバコを吸ってはいけません)
「なぁ、めぐみ。お盆休みに旅行しないか?」
と、煙を吐きながら言うと、
「シフト、空けとく。旅行いいね」
「美味しい海の幸を食べたいんだ」
「じゃ、日本海がわ?」
「どこでも、良いよ。枕崎でもいいよ」
「……枕崎はカツオばっかりじゃん」
2人は眠るまで、話し続けた。
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