第19話3年後の2人の影

タカシは23歳、かなこは25歳になった。そろそろ結婚の可能性を意識しだした2人。

タカシが市役所から仕事を終えて帰って来ると、かなこは晩ごはんを作っていた。

ポトフとマカロニサラダ。

マカロニサラダはタカシの大好物でいつも大量に消費する。

タカシはシャワーを浴びて、冷蔵庫から缶ビールを取り出し、テーブルで飲んでいると早速マカロニサラダを出されて、それをつまみにした。

「タカさん、今夜のマカロニサラダどう?」 

とかなこは皿にポトフを取り分けながら尋ねると、

「カナちゃんのマカロニサラダ、最高」

と喜んでいた。馬鹿が言う様な言葉だが、それ以外は表現出来ない。美味しいものは美味しいのだ。

ポトフもコンソメがほんのりとして、玉ねぎが甘い。

かなこは、麦茶を飲んでいた。


「ねぇ、カナちゃん。そろそろ結婚したい?」

かなこは、麦茶をゴクリと飲むと、

「……周りが結婚ラッシュなんだけど、私は私の計画があるから、結婚は急がなくていいよ。タカさんはまだ、23だし、これからの人生だから、結婚を焦る必要は全く無いよ」

「そっか。オレも、もっと経験しなきゃな。そうだよね。人生経験が浅い内に結婚したら、残酷な結末しかないからね」

と缶ビールを飲んだ。

夕食を終えた2人は、タカシは録画した映画館を観て、かなこはお風呂に入った。

そして、缶ビールを飲みながらタカシが首をグリグリ回すと、かなこがタカシの肩を揉んだ。

「タカさんの肩、ガッチガチ。ほぐさなきゃ、頭が痛くなるよ」

と言ってマッサージを始めた。

PT……理学療法士のマッサージだ。下手な訳が無い。

15分後、タカシの肩こりはウソの様にほぐれた。

かなこはタカシの横に座り、「沈黙のパレード」を一緒に観た。

かなこは、以前映画館で観ていたので途中から観ても分かる。

タカシは犯人は誰か分からない様子。

トイレに行くたんびに、タカシは映像を一時停止した。


かなこは悩んでいた。

それは、タカシに気付かれないように。不正出血があるのだ。

地元の病院ではバレてしまうので、有休を利用して、市外の婦人科に通っていた。

今度、大きな検査がある。

かなこは医療従事者だ。

最悪の事態を想定していた。

一次検査では子宮筋腫と診断が出ていたが、セカンドオピニオンを利用して検査するとやはり最悪の事態に。


子宮体ガン


ステージは教えて貰わないようにしていた。ただ、ガン告知だけ。

出来るだけ早く、手術したほうが良いと言われて、初めてステージを聴くと1だった。

安心した、かなこはタカシにガンの告知をした。

タカシは真っ青になったが、ステージが1である事を伝えて、安心させた。

手術によっては子供の出来ない体になるとタカシに告げたがタカシはかなこが生きているだけで良いと涙ながらに言う。

翌月、かなこは病院に入院した。

主治医の服部建造医師は、手術の説明をかなことタカシにした。

3時間半程かかるらしいが、かなこに心配する要素は何も無いと言って2人を安心させた。オジサン先生だが、外科部長であることから、2人は服部医師に全てを委ねた。


手術当日、タカシは市役所を休み手術が終わるまで立ち会った。

ロビーにかなこの両親、兄妹の姿もあった。

ストレッチャーで運ばれる、かなこは家族とタカシに手を振った。


手術が始まった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る