第18話みずほの落日

みずほは、シングルマザーとして生活している。

看護学生時代遊びまくって、複数の男と関係を持ち、妊娠して学校を中退した。

みずほは後悔した。

なぜ、タカシと付き合い続けなかったのか?と。

ウワサでは、めちゃくちゃ美人の彼女がいると聴いている。

この前、市役所にひとり親家庭の相談に行き、福祉課のタカシと目が合ったが、タカシは素っ気無く仕事をしていた。

みずほは子供を保育園に預けて、働こうとしていた。

特別援助をしている保育園があり、10ヶ月目の自分の子供を保育園が預かってもらえる事になった。

みずほは市役所の食堂のパートを始めた。

よりによって、市役所での勤務を選択したのは、もしかしたらタカシと復縁の可能性もあるし、他のパートよりもしっかり研修があり、食堂だけでは無く掃除も担当する事で時給が高くなるからだ。

タカシは、彼女の白窪と同棲しており、たまにしか食堂にはいかない。手作り弁当があるからだ。


「次のお客様」

と、みずほが言うとタカシが、

「Aランチで」

と言った。数年ぶりの優しい声だ。以前は調子の良いことタカシに言って、

「淫乱女」 

と罵られたのだが。

タカシはみずほが渡したトレイをよく見ると、メモ書きがあった。

それは、謝罪文と食事の誘いの言葉が書かれていた。

それを読んだタカシはクシャクシャに丸めてゴミ箱に捨てた。

一度離れた心はもう戻らない。

みずほは手紙の返事を待ったがいつまでも返事の無いことを知ると自分のおかした過ちを痛感した。

そして、みずほは半年間、市役所でパートして辞めてしまった。

タカシは清々した。どこまでも、図々しい女が辞めた事を。

人を裏切り、その尻拭いをしてもらうなんて有り得ない。

昼休み、スマホの通知音が鳴る。

確認すると白窪かなこからだった。

待ち合わせして、居酒屋に誘われた。まだ、20歳と言うのに、タカシは酒が強いのだ。その通知を読んだタカシは、少し口角が上がり、午後の仕事を開始した。

夕方、6時に駅で待ち合わせした、タカシとかなこは居酒屋「千代」へ向かった。

昔は幽霊屋敷の様な外観をしていたが、数年前に場所を変えて新しい店舗となった居酒屋である。

暖簾をくぐると、2人は生ビールで乾杯した。


「ねぇ、タカさん。最近まで元カノが食堂で働いていた事、気付いてた?」

と、かなこは付き出しの枝豆を口に運びながら言った。

この暑さだ。夏の枝豆は美味しい。

「うん、気付いていたよ。謝罪の言葉と復縁を期待していたらしいけど無視したよ。僕を裏切ったクセに図々しい」

タカシは枝豆が嫌いなので、自分の付き出しをかなこにあげて、鯉の洗いを酢味噌たっぷりで食べている。

「何で、元カノさんはタカさんをふったの?」

「学校で、ちやほやされたんだよ。結婚なんて甘い事考えてたけど、裏切ったアイツはどの男の子供か分からない妊娠をしてさ。でも、カナちゃんはそんな事をする女性じゃ無いでしょ?」

かなこは、背を伸ばして、

「私、そんな事は絶対にしない。タカさんを裏切らない」

「……信じるよ。ハイボール飲んでいいかな?」

と、タカシはハイボールをかなこは生ビールのお代わりを注文した。

2人は幸せは一生続くとその時は考えていた。

みずほは、風のウワサでは風俗で働いていると聴いた。

タカシは、多少の哀れみを感じたがもう、それ以降はみずほの事を思い出すことを辞めた。

全ては、みずほの遊びが招いた不幸なのだから。

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