第15話そして、卒業

卒業式前の週に、タカシとみずほはグラッツェにいた。

最後のパスタだ。

タカシはキノコパスタ、みずほはほうれん草パスタ。

タカシはキノコパスタにタバスコをかけすぎたようで、明らかに食が進まない。

意を決したかのように、一気にずるずる食べた。

食べ終わると、はぁはぁ言っていた。

「タカシって、馬鹿だよね。でもこの先馬鹿と毎日会えないなんてちょっと寂しい」 

みずほはフォークでパスタを巻ながら言った。

「その、”馬鹿”は辞めてくんない?これでも、職員なんだけど」

「後、4年経てば結婚できるね」

「うん、オレはそのつもりだよ」 

「でも、4年って長いね」 

「うん」


一週間後

その日は卒業式だった。みんな、アルバムに寄せ書きを書きあっている。タカシにも書いてくれという、ヤツが何人もいた。

式の最中、涙する女子がいた。数名。

あの、和田も泣いていた。

何回もタカシに殴られた和田だが、タカシ一番の友人だった。

和田は、大学に進学することになっている。

3月1日の出来事である。


数日後、タカシとみずほはスーツ屋さんにいった。

スーツは2着買ってある。シャツは市役所職員なので白っぽいものを5着買っている。

後はネクタイだけだ。

みずほにセレクトしてもらつた。ネクタイも安いのはペラペラだから5000円くらいのモノを探す事にした。

緑、茶色、ピンク、青、白黒の模様。

ま、いっか。とタカシは納得してバイト代で支払った。

帰りに、パチンコ屋に2人で入った。

みずほは打たなかったが、タカシは「大工の源さん」を打ち、500円で10連チャンした。

大金を手に入れた、タカシはみずほと焼き肉屋に行った。

「タカシ、あのパチンコってよくお父さんが話してた台だね。この前は3万円負けたって言ってた」

「これは、釘や出方をデータしなくては勝てないよ」

「タカシには、分かるの?」

「アハハ、さっぱり分からない。運だけさ」

2人はウーロン茶のみながら、焼き肉を楽しんだ。

支払いは、タカシの奢り。

7000円だった。

来月から、新生活が始まる。2人は各々、引っ越しの準備に忙殺された。

そして、4月の入職式とみずほの入学式が行われたのは、まだ、桜のは咲いていていた季節であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る