第11話タカシの絶望
夏休みが始まり、特進クラスの補習に通う日タカシ進路に大問題が起きる。
母親が子宮がんになってしまったのだ。
ステージ3。
手術は4時間も掛かった。それから、1ヶ月半入院して、仕事を退職した。
その間、父親は長距離トラック運転手なので自宅にはいない。
父親は頑張って、手術代や学校のお金を作っていた。
だから、タカシは帰ると弟と2人分の食事、洗濯をするようになった。
片親だけの収入じゃ、大学に進学出来ない。
タカシは絶望したが、進路を変えた。
高卒で市役所職員を目指すようになった。
市役所には、親戚がいる。
警察官も目指したが田舎の警察は、空手や柔道部の生徒に声を掛ける、タカシは弓道部お声はかかるはずも無い。
この事をみずほに話した。
「みずほ、オレは大学は諦めたよ。母親の看病もあるし、働かなきゃならないんだ」
みずほは目に涙を浮かべた。
「その優秀な頭脳を大学で生かせないのは辛いよね。私は、タカシを応援する」
「悪いけど、みずほ、しばらくは母親の看病があるから、夏休みの補習は出ないから。公務員試験の勉強は自宅でもできるし。たまに、遊びに来いよ」
「うん」
みずほは泣きながら、タカシに抱きついた。
「大げさだな」
「だって、頑張って勉強してたのに……」
「ありがとな。先生には事情を話したから」
帰りに喫茶店に入った。
タカシはパフェ、みずほはアイスティーを注文した。
大きなパフェと格闘しているタカシの姿をみずほはにこやかに眺めていた。
この日を境に、タカシはみずほと家の電話だけの繋がりになった。
みずほは早く、夏休みが終わる事とタカシのお母さんが回復する事を望んだ。
母親が自宅静養を始め、父親がいる時に、夏休みの終盤に突然みずほが現れた。
タカシの両親は、初めてみずほと出会う事になる。
手には大きな袋。
タカシの父親は、こんなかわいい彼女がいる事にたまげた。
直ぐに、母親のベッドに近付き挨拶して、桃のゼリーを渡した。
「あなたが、うちの子の彼女さんね。ありがとう」
「冷たいうちに食べて下さい」
みずほはエプロンをして、料理を作り始めた。
父親はタカシと将来の話しをしていた。
みずほの手伝いは、中学生の弟がした。
キッチンから、良い匂いがしてくる。
その日の晩ごはんをみずほは作っていたのだ。
そして、唐揚げとラザニアを作った。弟は鶏肉に片栗粉をまぶす役割だったらしい。
母親は何とか歩いて、テーブルに座った。5人で美味しい夕食を食べた。
父親はみずほの帰りの時間を心配したが、みずほは親に了解を得て、この日はタカシの家に泊まる事になった。
家族全員、みずほの料理の腕を評価した。
夜は、タカシの部屋にいた。
みずほが地方公務員試験問題集を渡した。
取り敢えず、過去問をタカシに渡して、みずほは時間を計り、数学を解いてもらった。
制限時間は50分。
タカシは20分で全問正解だった。
「タカシ、さすがだね。努力してる証拠。秀才ぶりは健在ってとこね。私、この前の模試全然ダメだった。英語なんて80点しか取れなかった」
「アハハ、80点も取ってるじゃん。心配ないよ」
タカシは立ち上がり、キッチンの冷凍庫からアイスクリームを持ってきて、2人で食べた。
そして、23時同じ布団で寝た。タカシがみずほに腕枕して、暫くしてからキスを始めた。
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