第5話米満センセイの指南
翌朝から、バスを降りたタカシとみずほはちょっと恥ずかしい気持ちがあるが、手を繋いで登校した。
校門を通る時に、スッと離れた。
タカシはリュックから、教科書類を出して朝補習の準備をした。
その日の補習は選択科目の社会で、タカシは世界史を選んでいたので、教室を離れて社会科資料室で期末テスト前の勉強をした。
その日、世界史の石神先生が欠席だったので、自習となった。
タカシは山川出版の世界史用語集を読んでいると、背中をシャーペンの頭でつつくヤツがいた。
もう、匂いで分かる。米満だ。
「杉岡〜、お前、佐山と手を繋いでたろ?」
「悪い?」
「付き合ってんなら、早くいえよ。オレが色んなアドバイスしてやるからさ〜」
タカシは用語集を閉じて、米満と話し始めた。
「昨日から付き合う事になったんだけど、バスから降りる瞬間にキスされた」
「ほほう。佐山は結構やるな。お前の肉体に惚れてるんだろ!」
「オレは夏休み、チェリーを卒業したい。教えてくんさい、センセイ!」
米満はニヤニヤしながら、
「佐山って、Eカップらしいぞ。オレの彼女が言ってた。それと、今まで彼氏はいなかったらしい」
「ほいで、ほいで?」
「こう言う時は、焦らず慌てず近付くのがベストだな。カトウタカも言っていたよ」
「あぁ〜、男優の」
「じゃ、先ずは何したら良いんだ?今度、映画観に行くんだけど」
と、タカシは至って真面目に質問した。
「映画館って、暗いだろ?それを利用してキスするんだ。だから、後ろで端っこの座席を選んだらいいよ。先ずはディープキスを目標に。それが、抵抗無くなれば直ぐにエッチ出来るよ。杉岡のデカいから、ゆっくりな?痛がる女の子多いから。詳しくはまた聞いてよ」
米満は真面目に、変な理屈を話していたが、タカシにとっては神様だ。そして、休み時間に、たまたま持っていたエロビデオを貸してもらった。
昼休み、学食で焼肉丼を食べた。380円。
ちょうど、窓ぎわの席で涼しい風が吹いてくる。
腹を満たされたタカシは船を漕ぎ始めた。
「杉岡、おいっ杉岡」
国語の堀内先生に起こされた。
周りはクスクス笑っていた。
もちろん、みずほも。
タカシはバツの悪そうに、左斜め上を見詰めて、頭をかいていた。
放課後
タカシとみずほは明日の土曜日の話しをしている。
「朝、9時45分の電車に乗れば、11時の開場に間に合うな。吉松駅に9時集合でいいかな?」
と、タカシはいちごミルクを飲みながら話すと、
「駅まで何で来るの?」
と、みずほは無印のマシュマロを口の中に入れた。
「バイク」
「えっ、タカシ、バイク乗れるの?」
「うん、NS1 だよ」
「知らなかった〜。気を付けて来てね」
「うん」
2人は特進クラスなので、時間には制限がある。タカシは帰宅すると、直ぐに夕飯を食べ、風呂に入り、20時から深夜2時まで勉強する。休みの日は、ずっと勉強だったから、こうやって休みの日に外出するのは久しぶりだった。
みずほは看護学校を選択したので、タカシより背負うモノは軽い。模試でも、ずっとA判定なのだ。
帰りのバス停に向かう途中、2人はコンビニへ寄った。
タカシはオレンジ味のジュースで、みずほは麦茶を買い物かごに入れたが、支払いはタカシがした。財布を尻ポケットに入れようとすると、パサッと何が落ちた。
それを、みずほが拾ってくれた。
タカシは真っ青になった。
それは、コンドームだったのだ。しかも、ラージサイズ。
みずほは顔が赤い。
これは、米満センセイがプレゼントしてくれたモノで、センセイもラージサイズなのでおすそ分け。
そして、お金のおまじない。
その頃は、財布にコンドームを入れる男子が多かった。迷信を信じていたのだ。
拾ったみずほは、やはり以前後輩が、タカシのアソコはスゴイって聞かされてたから、ここで確信した。
制服を着ていても、上半身を鍛えた筋肉質な感じで、太ももはみずほのウエスト位大きい。
だから、きっと……。
2人はバス停のベンチでそれぞれの飲みモノを飲みタカシが言った。
「コンドームは、お金が増えるおまじないなんだ。変な意味は無いからね」
「うん」
ひぐらしが鳴き始めた。
2人は到着したバスに乗った。特段、話もない。この日、みずほは帰りのキスはしなかった。
帰宅したタカシは一連のルーティンを済ますと、米満からたまたま持っていたエロビデオを見た。
ぼかしが入ってるから、分からないけど女子の性器ってどんなのか?と思った。
それで、センセイに無修正のビデオを後日借りたのだが、こんなんがみずほにもあるのかと思うと残念だった。
この穴に、自分の性器を突っ込んで気持ち良いものなのか?
金曜日の夜は、3時に寝て翌朝8時まで寝て、Tシャツにジーンズでバイクにまたがり、吉松駅に向かった。
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