第55話 こっそり兵士がキヌマートのコンビニで食事を買っていたのを禁止する

それから暫く経ってから、城の兵士が毎日キヌマートに来ては大量購入していることが判明した。

国王の野郎、兵士を送りだしてキヌマートの商品だけ買って楽しんでるね?

なら、ここらで一つ締め上げてやろうか。



「え! 王国の兵士は中に入れないのですか!?」

「魔王様が大変激怒されまして。キヌマートの商品だけを購入して帰る者は入れないようにとの通達です」

「こ、困ります!! 陛下に首を切られます!!」

「そうは言われましても……。魔王様がお怒りですと言うのだけはお伝えください」

「あああああ……」



そういって崩れ落ちる兵士たち。

それは数か月続き、キヌマートの商品を購入できず帰っていく兵士たちの様子をカナデの鏡で見ていると、随分と肥え太った国王が兵士に怒鳴り上げている姿が見えた。

余程キヌマートの料理が美味かったんだろうねぇ。



『今更元の料理に等戻れるか!! 魔王を、魔王を討伐せよ!!』

『いえ、和平を持ち掛けてキヌマートを王国内にも出店させた方がマシです』

『送り出した冒険者が戻ってこないほどの快適な場所なんですよ!? 今の魔王は人間の事を良く知り尽くした相手かも知れません!』

『攻撃よりも和平を、それでキヌマートを呼び寄せましょう!』



そう話し合いが並行しているようだね。ヒヒヒ。

悪いがそんな事を言っている間に国庫はどんどん食いつぶされているよ。

そんな事を話していていいのかね?

クスクスと笑いつつ様子を伺っていると、『せめてキヌマートの創立者と会談出来ればいいのですが……』と大臣たちも話し合っている様だね。

その話し合い、参加するつもりはないんだけれどねぇ?

寝ても覚めてもキヌマートの食べ物が忘れられない国王と王太子の様子に、大臣たちは大分困惑してるようだ。



「変な物は入ってない筈だけどね」

「恐らく化学調味料かと。勇者たちもかなり苦しんだみたいなので」

「なるほどねぇ」

「このままどんどん苦しめばいいですよ。召喚しておいて要らなくなったら戻れ等、この国のトップは異世界人を道具のようにしか見ていない」

「国民もだよ」

「悲しい事ですね」

「ヒヒヒ。だからこそぶっ壊すんだろう? 勇者たちの事はどうでもいいが、アタシ達異世界人を馬鹿にしたツケも払って貰わないとねぇ」



魔王領や魔族たちからは、アタシが魔王と言う事もあって畏怖と感謝をもって接して貰えるし、曾孫であるカナデも大事にして貰えているが、人間側はそういうのがない。

全くもって勝手なものだよ。


だからと言って、今は勝手に命を奪って経験値を得ることはしてないけどねぇ。

以前アタシに殺された冒険者たちも多くこのダンジョンに来ているが、アタシに殺されたとは思ってもいないようで、笑顔で「キヌ様」と挨拶してくる始末だ。

まぁ、隠密行動が功をなしたかね?

追々を考えて派手に動かなかったのも良かったのかもしれないねぇ。



「キヌマートのオーナーに書状を送る事で議会は決定したみたいですね」

「ヒヒヒ! アタシはその時は最果ての町に行っていようかね。フェルの様子も気になるからねぇ」

「ああ、留守を使うんですね」

「血縁者のアンタが受け取っておきな。色のいい返事は無理だと伝えておいておくれ」

「分かりました」



こうして王国の使者を遠回しに嫌煙していることを表に出しつつ、面談拒否を突き付けた訳だが、さてさて、どうでるかね?

そう思いつつ日々変わらぬ日常を送りながら、書状を持ってくるまで時間がある為、カナデが提案したカードゲームとボードゲームが今どうなっているのか聞くことにしたのだが。



「カードゲームは札束で相手を殴るゲームですよ? どれだけカードを所持しているかで勝敗が決まりますので、2種類のカードを販売してカードバトルして貰っています。皆さん気前よくカードを買ってくださいますね」

「へぇ……札束で相手を殴るねぇ。そいつは知らなかったよ」

「ボードゲームは割と平和ですね。壮年の冒険者がハマってやってます」

「ふむ」

「そう言えばクレーンゲームにあちらの世界で流行っていたフィギュアを入れたら男性冒険者が群がりましてね。クレーンゲームを更に増やしたくらいです」

「ははは! 確かに曾孫の誰かがフィギュアにハマってたねぇ」



そう言えば曾孫の誰かがフィギュアにハマっていたのを思い出したが、誰だったかねぇ。カナデではなかったが……。

カナデがハマっていたのはピアノとバイオリンだったし、よくコンクールに出ていたっけねぇ。



「あの手はハマりだすと止まらないと従兄も言っていましたし、実際そうなんでしょうねぇ」

「孫も曾孫も多すぎて誰が誰だか覚えちゃいないよ」

「ははは!」

「ただ、アンタは爺様に似てピアノや音楽が好きだったのは覚えていたからね」

「全く、曾爺様のお陰で覚えて貰えてよかったですよ」



そういって苦笑いするカナデにアタシは微笑むと、売り上げを任せている部署に向かい、目を金貨色にして仕事するドラゴン族たちに話を聞いていく。

確かにカードゲームが増えてから一気に売り上げがまた伸びたようで、カードは出せば売れる状態らしい。

そこで、カード専門店を作ってみてはどうかと言う話が出た為、それならばと一階にカード専門店プラス、買取店を作った。

無論買い取ったカードは再度売りに出すがね。ヒヒヒ。

足りないところを補いたい奴らがこぞって買うだろよ。


ドンドン魔王ダンジョンに染まっていく冒険者達。

もう冒険者ともいえないかもしれないが、元の冒険者に戻ることは不可能になった者たちは、時折金が無くなってドルの町に戻る以外、只管このダンジョンに籠り続ける。

冒険者が冒険者でなくなっていく……剣の腕は落ちていく。

中には魔族と結婚して冒険者をやめる者も出てくる。

そのいい循環に陥った時が、最も人間の世界が苦しむ時期に突入する時だ。

あと少し。様子を見ようかねぇ?





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