第27話 現魔王と、魔王の曾孫の実力

少し休んだらフェルに家を頼んで魔王領近くにハイエーナのキャンピングカーを出した。運転はタリスとトリスに頼んで魔王城まで頼み、アタシ達はソファーに座って茶菓子でも食べつつゆっくりとさせて貰う事にした。

時折ドンドンと弾む音がするが、恐らくタリスが魔物を撥ねているのだろう。

飛び出す方が悪いとはよく言うが、この場合どっちが悪いんだろうねぇ。



「問題は宰相のモーダンと、四天王たちがどう言うかですわ」

「宰相さんいたんだ……」

「四天王殺されてなかったんだな。勇者と戦ってないから当たり前か。無様な生き残りめ」

「およし。生きている分使い道はあるんだからね。無駄な命はないんだよ。冒険者だってアタシ達の大事な経験値になってくれただろう?」

「ええ、勇者なんていいカモでしたよ」

「ゴミムシレベルの勇者でも僕たちの大事な経験値でしたからね!」



トッシュもうちの曾孫に引き摺られていい感じに狂ってきちまったねぇ。

これはこれでアリ……なんだろうか。まぁ、人間を殺して経験値を得ていたのだから闇落ちはしてないだろうが、それに近い部分にはいるだろう。



「四天王と言え、今の魔王様であるキヌ様には勝てませんわ。ただ……」

「ただ?」

「階層の管理をさせるには丁度いいかもしれませんわね」

「男女合わせて四人いるんだっけねぇ?」



アタシも一度しか顔を見てないが、第一層と第三層の守りを固める為にもいて貰った方が良いかもしれないね。

それこそ、警備のトップとして君臨するというのはとても大事なことだ。



「サキュバスのルルは間違いなく第三層だね」

「そうですね、そうなると思います。後はルルの為に四天王になったというハデリスも第三層が良いかと」

「ハデリス……いたねぇ。年若い魔族の子だったね」

「はい。後のカテリナとノルディシーは第一層で宜しいかと」



そういわれてアタシも面々の顔を思い出す。

ルルとハデリスは確かに二人一組の方が良さそうだ。

問題はカテリナとノルディシーだが、二人ともにそれなりの若さを保つ上位魔族だ。

カテリナとノルディシーはアタシのレベルさえ上がれば従うと言っていたし問題はないだろうが、問題はルルとハデリス。

こっちはカナデの方が管理に向いているだろう。

それに一階から四層までの間をがっちり固めておけば問題はないとは言え、アタシの見立てでは、そのうち一人一層ずつ守る事にはなりそうだねぇ。



「しかし、さっきから車に誰か攻撃してるね?」

「え!」

「魔王様の乗っている車をですか!?」

「どうなんだいタリス」



そう運転席に声を掛けると、トリスがやってきた。

なんでも魔族が4人空にいて攻撃魔法を放っているらしい。

そこで窓から上を見ると、確かにいる――四天王が。

こりゃ手っ取り早いと思いつつ、そのまま魔王城まで突っ走るようにタリスに伝えてくるようにいい、アタシはニマニマしながら緑茶と羊羹を口にした。


嗚呼……無様に攻撃しながら全く傷一つ付かない、それどころかスピードアップして魔王城に突っ込んでいくこの車を見て、四天王たちがどんな面をしているのか考えるだけで羊羹がさらに美味くなるよ。



「キヌ様、宜しいのですか?」

「放っておきな。このまま魔王城まで突っ走って、戦闘態勢の四天王の前にアタシが出て行ったらどうなる?」

「キヌ様の強さを理解する……筈ですが」

「カテリナとノルディシーは元魔王であるピアに忠誠を誓っていた相手。アタシに対しては強さがないと従う気はないと口にした。そのアタシの乗っている車を攻撃して傷一つ付けることが出来なければ……否応なしにアタシの実力を知ることになるだろうねぇ」

「確かに……」

「では、他二人はどうなりますかね?」



そうカナデが問いかけてきたので、アタシは暫く考え込むと「生意気だと憤慨するんじゃないかい?」と口にした。

途端カナデは「では、俺が調教しても?」と言ってきたので「もとよりアンタに頼むつもりだったよ」と笑顔で口にすると、いい笑顔で「それは僥倖です」と嬉しそうに語った。


全ての攻撃を無傷で走り続けるハイエーナのキャンピングカー。

タリスの運転技術により多少運転が荒いものの、ナビが『もうすぐ目的地周辺です』と告げると、アタシ達は準備を始める。

そして急ブレーキと同時に車はスピンし、魔王城の階段前で横づけされると、ドアを開けて降り立つ。



「貴様は!!」

「久しぶりに魔王城に帰ってきたっていうのに、中々派手なお出迎えだったねぇ」

「全くですわ」

「ここが……魔王城……僕、始めてきました」

「安心してくれトッシュ、俺も始めて来た」



車から降り立ったアタシ達とタリスとトリスに、車を消して階段を登ろうとすると――ルルとハデリスが立ち塞がった。

まぁ、そんな気はしていたがと呆れたように溜息を吐くと……。



「アタシ達はアンタを新しい魔王なんて認めてないわ!!」

「俺もルルの考えに同意する!! そもそも人間が魔王なんて――」

「『頭を垂れて平伏せよ』」



アタシが言う前に頭に青筋立てたカナデが二人に対してスキル【一喝】を使い、二人はすぐさま平伏した。

更に【魔王の瞳】を発動させてゆっくりと二人に近づいていく。



「何です? 魔王様である曾婆様が経験値を稼いで魔王に相応しい状態で帰ってきたというのに、あなた方の態度はどういう了見ですか?」

「あ、ぁ、あ。貴方様は……」

「一体どちら様で……」

「低能に教える名はありませんが……魔王様の曾孫とだけ伝えておきましょうか。それで、あなた方四人……ああ、四天王とかいう、死にぞこないでしたっけ?」



そう口にすると上を飛んでいたカテリナとノルディシーも頭を垂れて平伏した。

顔色がとても悪いのはカナデのスキルの所為だろう。



「どうです? 曾婆様の力の前にあなた方の攻撃は全く効いておりませんでしたよ。それだけレベルを上げて来たんです。ええ、無論俺もですが」

「「「「は、はい!!」」」」

「今ここにいる面々は曾婆様……現魔王様の元で人間を、そして勇者を何度も殺してレベルを上げてきた者たちですよ。あなた方のように城に引き籠って何もしていない名前だけご立派なお前等とは違うのだよ」



そう口にすると四人はガタガタと震えあがり、余程の恐怖を感じていると思われる。

やれやれ、そろそろ止めるかね……と思いアタシがカナデの肩を叩き「そこまでだよ」と言うと、カナデは舌打ちして力を消した。

途端ドサッと倒れた四人にピアが駆け寄る。



「もう! カナデ君やりすぎだわ!」

「無礼な真似をしてきたのはそちらでしょう。俺はそれに対して教育的指導をしただけですよ?」

「もう! いじわるなんだから!」

「「ピアリア様!!」」



ピアの登場にカテリナとノルディシーが涙を零しながら無事を喜び、「ただいま」と口にしたピアにホロホロと涙を零す。



「さ、魔王様のご帰還だよ!! しっかり着いてきな!!」

「「「「はっ!!」」」」



こうしてアタシ達は四天王を連れて魔王城へと入っていったのであった。

そして――。




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