第28話 魔王城で宰相を交えた今後の展開

堂々たる魔王城。

其れとは打って変わって、中身はシンプル。

元魔王だったピアの曾祖父は仰々しい造りや有様を嫌ったからこの形になったと聞いているが、中々味があっていいとさえ思っている。

きっとピアの曾祖父とは気が合ったかもしれないねぇ。


ヒールを鳴らしカツンカツンと歩いていけば、多くの魔物たちはアタシを見て驚き平伏している。

体から滲み出るレベルの強さもあるのだろう。

そもそも、元魔王だったピアの曾爺様ですらレベル80だったと聞いている。

それなのに、人間のアタシが魔王でありながらレベル100越えともあれば、平伏するのは当たり前だろうねぇ。



「皆、平伏しなくていいから仕事をしな!」

「「「は、はい!!」」」

「誰かピアの乳母であったサーバルを呼んできておくれ! 宰相のモーダンとも今後の話がしたい!」

「玉座に呼んでまいります!」

「時間は惜しいんだよ! 手早く動きな!」



そう命令しながら歩いていくと、先ほどアタシ達を襲った四天王はビクビクしているものから誇り高そうに胸を張っているものと色々だ。

魔王の玉座に到着すると、アタシは無駄に大きい椅子が嫌でアイテムボックスに仕舞い込み、【ネットスーパー】で買った座り心地の良さそうな椅子を一つ、その両隣にピアとカナデ。カナデの隣にはミツリを、ピアの隣にトッシュタリスを置き、机も購入するとそこに二匹のトリスとタリスが立った。



「アンタたちは此処にいる間だけ形だけ立ってな。疲れはしないだろうが、何事も形って大事だからねぇ」

「「「「はい」」」」

「タリス、トリスはそこで無礼者が来たら殴って外に追い出しな」

「我、了解した成り」

「我、排除する故」

「あの、魔王様……そちらのスライムはいったい」



そうカテリナが問いかけてきた為、タリスはトッシュタリスがテイムした『レジェンドスライム』で、もう一匹のトリスはタリスから分裂してアタシと契約した『レジェンドスライム』だというと、顔を引き攣らせてトッシュを見ていた。



「普通ならレジェンド系列はテイム出来ないと言われています!!」

「でも出来たんだからいいじゃないか」

「そうですが……。君、一体何者なの?」

「えっと、僕……」

「それより、男なの? 女なの? どっちなの?」

「「え、そこ?」」



カテリナは意外と天然かもしれないねぇ……。

そんな事を思いつつ、アタシの方から「少々訳アリの獣人の子だよ」と伝えると、カテリナは「訳アリ……ですか」とトッシュをじっと見つめていた。

暫くすると玉座の間の扉が重々しく開き、現れたのはサーバルと、宰相モーダンだった。



「「お帰りなさいませ、我が魔王様」」

「先ほど仲間も増やして帰って来たよ。皆に変わりはなかったかい?」



そう問いかけると、冒険者が数名入ってきて戦闘になったことを教えてくれた。

冒険者は倒したが、こちらもそれ相応に被害も出たそうだ。

後で回復魔法をお願いしたいという事だったので、アタシはピアに言って傷ついた兵士たちを治してくるように伝える。

その案内にピアの乳母でもあるサーバルに頼むと、アタシは膝をつき平伏している四天王及び、宰相モーダンに話しかけた。



「さて、紹介をしておこうと思う。こっちのアタシに似た青年は、勇者に奴隷にされていた大事な曾孫のカナデだよ。勇者をぶっ殺してやった時に奴隷の首輪も魔王権限で壊して保護したのさ」

「初めまして。孫のカナデと申します。以後お見知りおきを」

「そして訳アリの獣人の子、トッシュタリス。この子の事は今後獣人族と何かあった際のカギとして使わせて貰う」

「えっと、トッシュタリスです。よろしくお願いします。こう見えて銃の腕はとてもいいですので! 魔王様のお役に立てて良かったです!」



そういって可愛らしい笑顔を見せたトッシュにハデリスは頬を染めていたが、『悪いが女の子のように見えてトッシュは男の子だよ』……とは敢えて言わなかった。



「さて、アタシ達も人間の住む地域を転々として居た訳ではないのだけれどね。運よく最初に着いた村から少し行った先にある町でレベル上げをしていたら、勇者がやってくるって情報を耳にしてね……孫を救い出すついでに頭にズドンッとぶち当てて殺しはしてきたが、このカナデの隣にいる子はその勇者パーティーから抜け出した回復係だった子だよ」



その言葉に全員の殺気がミツリに向かったが、アタシのスキル【覇気】でバリアを張っていた為、酷い事にはならなかった。



「魔王様、お言葉ですが」

「煩いねぇ……。アタシが連れて来たってことは事情があるって分からないのかい?」

「も、申し訳ありません」

「このミツリは曾孫のカナデを助けていただけにとどまらず、勇者と無理やり婚姻させられ、無理やり旅をさせられていたいらしい。好き好んで勇者と一緒にいた訳ではなかったのは調査済みだよ」



これには驚き声を上げる皆に、手を挙げて声を押さえさせると、「次に」と声を続けた。



「アタシが戻ってきたのには理由がある。冒険者たちから金を毟り取り、人としての信用をぶち壊してやろうかと思ってねぇ……。その為の草案は此処に帰ってくるまでに作ってきたんだよ。聞いてくれるかい?」

「宰相のモーダン、謹んでお聞きいたします」

「じゃあ、アンタ達の意見も後で聞こうかね、まずは――」



そう言って、アタシの思い描くダンジョンの事を語るのに約1時間位かかったが、それらをアイテムボックスから取り出したノートに記載していったのはモーダンだった。

他の者たちも驚き「そんなことが出来るのですか?」と聞いてきたが、アタシは努めて笑顔で「――こうしようと思っているんだが、アンタ達の意見を聞きたいねぇ」と伝えると……。



「人間ってのは、金がないと生きていけない。信用がないと生きていけない。それらを扱き下ろすまでやっておかないとねぇ……。その上でアタシが狙うのはスタンピードだよ。楽しみじゃないかい?」

「……実にいい案だと思います」



そう語ったモーダンはため息交じりに光悦とした表情を浮かべて内容を再度読み、「実に素晴らしい」と絶賛している。

四天王のうち、カテリナとノルディシーは「了解致しました」と口にし、ルルとハデリスはよく理解できていないのか不思議そうにしている。



「異世界の食べ物ってそんなに美味しいの?」

「食べてみたいわ!! それ次第ではどんな仕事だって叶えて見せるわよ」

「言ったね? 四天王としてウソは言わないね?」

「「言わない」」

「そうかい。カナデ、二人にシュークリームを出してやりな」



こうしてカナデは【ネットスーパー】からシュークリームを二つ購入して取り出すと、二人に手渡し食べさせた。

カテリナとノルディシーはゴクリと喉を鳴らし、ルル達を見守っていたが――。





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